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魅惑~甘く溺れる身体と心。
第1章 あたしの好きな人。

でもね、辛くて悲しいのはあたしだけじゃない。
お父さんだってあたしと同じくらい悲しいと思うの。
愛していた女性に裏切られたのだから――。
だから、あたし、頑張ったんだよ?
苦手なお料理も擦り傷とか作りながら、美味しいって笑ってほしくて。
お母さんがいた頃と変わらないくらい、お掃除もお洗濯も――。
少しでもお父さんに元気になってほしい一心で頑張ったんだ。
中学もあったし、部活も吹奏楽に入っていたから朝早くて、夜も少し遅かったりして――。
頑張って家のこともこなしていたんだ。
2週間くらい経った時かな。
夜が遅いのを心配したある日。
お父さんが弟さん――唯斗(ゆいと)さんにあたしのお迎えをお願いしてくれたらしい。
初めはね、たしかに格好いい人だなって思ったよ?
襟足まで短く切り揃えられた黒髪で背が高くて足が長くて雑誌のモデルさんみたいな人。
優しそうな雰囲気だけど、どこか芯の通った頼り甲斐のある男性っていう感じ。
実際、唯斗さんは本当に優しくて。だって唯斗さん大学を卒業してやっとお仕事になれてきた頃だと思う。
すっごく格好いいから彼女さんだっていたよね。
それなのに、中学生のお守りなんて――。
あたしだったら嫌だって拒否するところだよ。
それなのに、唯斗さんは快く引き受けてくれて、いつも笑顔でいてくれたの。
当時は自分よりずっと年上の人だし、あたしにとってはお兄ちゃんのような甘える気持ちがいっぱいで、恋愛感情なんてなかった。

