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僕の愛する未亡人
第2章 はじめての社外業務①

「これ、どこまでやった?」
「あ……ここまで」
終わった紙を持ちながら、冴子を見上げる。
「これ、共有ファイルのデータに入力する在庫の店舗管理の分だよね?」
「はい」
冴子は作業の終わっていない紙を当然のように、取り上げる。
「ちょうど帰るところだったから。半分やるよ」
お礼の言葉を飲み込んだまま、理央はただその後ろ姿を目で追っていた。
――十八時半頃。
冴子が「お先に失礼します」と声をかけるのが、イヤフォンをしていない理央の耳に聞こえた。
「ん」
丁寧に整えられた紙の束が、理央のデスクに置かれる。
「佐藤くんももうすぐだね。あたしも誤入力があるかもしれないから、明日確認しといて。早く終わらせて、今日は休みなさい」
「ありがとうございます」
理央も程なくして入力を終える。
紙の束を引き出しに入れて、鍵をかけると、革のリュックをデスクの下から取り出す。
冴子に手伝って貰っていなかったら、もう三十分以上、会社に残っていたことになる。
明日、きちんとお礼をしよう。
そう思いながらエレベーターに向かうべく、更衣室の前を通ると、冴子が入口の辺りで電話しているのが見えた。
「……ありがとね、連絡くれて」
電話が終わったのか、スマートフォンをバッグに入れた冴子のヒールの音が理央の後ろに続く。
理央がエレベーターのボタンを押すと、冴子も追いついた。
「……あの、もしかして、僕……待ち合わせに遅刻させちゃったとかですか…?」
「ううん、違う。待ち合わせの相手が残業になった」
エレベーターの到着を知らせる音が、やけに大きく響いた。
二人きりで乗り込むと、狭い空間に香りと体温が広がり、理央の心臓は落ち着きを失っていく。
「彼氏ですか…?」
「わたしにもそんな相手はいません」
「そっか……僕、実は飯塚さんが会社の近くで、男性と二人で腕組んで歩いてるの…見たんですけど」
さすがに冴子が目を丸くする。
「あ、や、誰にも言ってないですよ?!」
「いや…佐藤くんの正直さに救われた。会社の近くは気をつけることにする。普段気を付けてるんだけど、時間が遅かったのよね、会社の近くで相手が待っててくれた時だと思う。でも、誰だったか忘れた」
冴子はふっと笑う。
「あ……ここまで」
終わった紙を持ちながら、冴子を見上げる。
「これ、共有ファイルのデータに入力する在庫の店舗管理の分だよね?」
「はい」
冴子は作業の終わっていない紙を当然のように、取り上げる。
「ちょうど帰るところだったから。半分やるよ」
お礼の言葉を飲み込んだまま、理央はただその後ろ姿を目で追っていた。
――十八時半頃。
冴子が「お先に失礼します」と声をかけるのが、イヤフォンをしていない理央の耳に聞こえた。
「ん」
丁寧に整えられた紙の束が、理央のデスクに置かれる。
「佐藤くんももうすぐだね。あたしも誤入力があるかもしれないから、明日確認しといて。早く終わらせて、今日は休みなさい」
「ありがとうございます」
理央も程なくして入力を終える。
紙の束を引き出しに入れて、鍵をかけると、革のリュックをデスクの下から取り出す。
冴子に手伝って貰っていなかったら、もう三十分以上、会社に残っていたことになる。
明日、きちんとお礼をしよう。
そう思いながらエレベーターに向かうべく、更衣室の前を通ると、冴子が入口の辺りで電話しているのが見えた。
「……ありがとね、連絡くれて」
電話が終わったのか、スマートフォンをバッグに入れた冴子のヒールの音が理央の後ろに続く。
理央がエレベーターのボタンを押すと、冴子も追いついた。
「……あの、もしかして、僕……待ち合わせに遅刻させちゃったとかですか…?」
「ううん、違う。待ち合わせの相手が残業になった」
エレベーターの到着を知らせる音が、やけに大きく響いた。
二人きりで乗り込むと、狭い空間に香りと体温が広がり、理央の心臓は落ち着きを失っていく。
「彼氏ですか…?」
「わたしにもそんな相手はいません」
「そっか……僕、実は飯塚さんが会社の近くで、男性と二人で腕組んで歩いてるの…見たんですけど」
さすがに冴子が目を丸くする。
「あ、や、誰にも言ってないですよ?!」
「いや…佐藤くんの正直さに救われた。会社の近くは気をつけることにする。普段気を付けてるんだけど、時間が遅かったのよね、会社の近くで相手が待っててくれた時だと思う。でも、誰だったか忘れた」
冴子はふっと笑う。

