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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第13章 一気呵成のカタルシス
裕樹は楓の言葉を聞いて、思わず目を瞬いた。

それは六年間、胸の奥に石のように抱えてきた重さが、あっけなく外されてしまったような気分だった。

「え?じゃあ僕は、ずっと勘違いしてたってこと…?」

ぽかんと口を開けたまま、思わず苦笑がこみ上げる。

罪の意識は薄れて、体から僅かに力が抜けていく。

けれどその代わりに浮かんでくるのは、別の種類の後悔だった。

(葵ちゃん、あんなにそっけない感じだったのに、ノリノリだったのかよ…。もっとエロいことしておけば良かった…。)

唖然とした感覚と、妙にリアルな未練とが入り混じって、思わず頭を抱えた。

それを見た楓は、ふふっと楽しそうに笑っていた。

裕樹も釣られて笑ってしまう。

「楓さん、ありがとう。なんか、身も心もが軽くなった気がするよ。」

「あら、それは良かった。どういたしまして。」

楓はそう言って微笑んだ。

だが次の瞬間、その笑みは鋭さを増した。

「葵ちゃんへの罪悪感も晴れたわけだけど…今度は私のことを観察しちゃうのかしら?」

楓は少し前屈みになり、瞳の奥で裕樹を捕らえる。

さきほどまでの母性的な優しさは跡形もなく、そこには獲物を狙う女豹のような眼差しだけがあった。
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