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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第11章 天哭ノ鏡

 行為を終え、巫女はぐったりと鬼の胸にもたれかかった。

 彼女の身体は汗に濡れ、赤い痕が花弁のように散らばる白い肌が、偽物の昼の光に照らされてほのかに輝いている。

 鬼は片手で彼女の華奢な身体を抱き寄せ、ふと──縁側(エンガワ)の床に散らばる桜色の和紙を指に挟んだ。影尾(カゲオ)が巫女に渡した、桜餅の包み紙だ。

「このような甘い菓子を好むのか?」

 彼の声は低く、探るような響きを帯びる。和紙を指で弄びながら、巫女の顔をじっと見つめた。

 巫女はまだ上擦った声で、息を整えながら答えた。

「普段は、あまり口にしません……。ですが美味しかったです」

 彼女の声は震え、快楽の余韻が残る中でも、誠実に答える。

 彼女の瞳には、以前のような敵意が薄れ、目の前の鬼へ共感したいという意思が宿る。

 彼女は鬼の深層心理に、長く何かを求め続けた果てに積み重なった、やっかいな渇望(カツボウ)を垣間見ていた。

「わたしからも、あなたへ聞きたいことがあるのです」

「何をだ」

 巫女は力を振り絞り、鬼の視線を正面から受け止めた。

「──…あなたが800年もの間、鬼界を離れて探し求めている何かについて」

「……!」

 問われた鬼の表情が一瞬硬くなる。



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