この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
巫女は鬼の甘檻に囚われる
第9章 朝露の来訪者

「少し我慢してね」

 彼女の声は優しく、まるで子守唄のようだった。

 狐は身を固くしていたが、巫女の光に触れると、わずかに目を細め、緊張が解けたように体を預けた。

 黒く変色した後ろ足から、じわじわと闇のようなものが溶け出し、地面に染み込んで消えていく──。巫女は慎重に呪いを浄化し、狐の体から邪気を引き剥がした。

「よし……これで大丈夫」

 浄化が終わると、狐の後ろ足は元の小麦色の毛並みに戻っていた。

 大きな二本の尾が軽やかに揺れ、狐はほっとしたように小さくクゥンと鳴く。

 巫女は微笑み、そっと狐を抱き上げ、縁側に戻って座った。その体は驚くほど軽く、温かかった。

「よかった。もう痛くありませんよ」

 狐は巫女の声に答える代わりに、彼女の腕の中で身を丸め、太ももの上で小さくなり眠り始めた。まるで安心しきったように、彼女の胸に顔を擦りつけ、くつろいでいる。

 眠る狐からキュルキュルと高い声が漏れているのは、ネコがごろごろと喉を鳴らすのに似ていた。

 キュルル...キュルッ
 クゥン

 柔らかな小麦色の毛が巫女の肌をくすぐり、彼女は思わず笑みをこぼす。

「…っ…ふふ、ずいぶん甘えん坊なモノノ怪ですね」

 その瞬間、偽物の朝光が一層強くなり、森の奥から新たな気配が寄ってきた。

「……?」

「──こんなとこにいたか」

 巫女は顔を上げ、鋭い霊感でそれを探る。それはモノノ怪の気配だったが、敵意は感じられない。

「玉藻(タマモ)、ようやく見つけたぞ!」

 草むらをかき分けて現れたのは、少年だった。

 瘦せた体に古い着物をまとい、髪は乱雑に伸びている。だが、その瞳は狐と同じ琥珀色で、落ち着いた知性とわずかな警戒心が混じっていた。


/111ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ