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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第8章 鬼と巫女の攻防

鬼は水浴みを終えた巫女を抱き、滝の冷気から彼女を守るように屋敷へと戻った。
無言の彼の瞳は、深く沈み込むように何かを考えている。巫女の魂を完全に我がものにする方法を、本気で模索しているようだった。
(本気なのかしら。わたしの身体を好きにできるこの鬼が?本当に、それ以上も手に入れたいと?)
巫女の濡れた黒髪が彼の腕に雫(シズク)を落とし、沈黙に鳴る。
そのまま二人が屋敷に着くと、鬼は外を臨む縁側(エンガワ)に巫女を下ろした。
裸体を月光に照らされて心もとなげに身を縮める。
…そんな巫女へ、鬼は一枚の着物を差し出した。
「…?これ は?」
「もとの衣は引き裂いた。よってお前に与える」
彼女は差し出されたそれを手に取り、胸元を覆った。布に織られた文様を見つつ、予想外の鬼の行動に眉をひそめる。そもそも、女物の着物を彼が持っているのは何故なのか。
(いったい誰から奪ったものなの)
疑念が心をよぎるが、口には出せなかった。
「……」
彼女を観察している鬼は、着物をとった彼女が喜んでいないことを察知する。
「その派手な衣もお前の好みではなかったらしい……。お前の魂を動かす美しさとはなんであろうな」
鬼が低く問う。声には苛立ちと、好奇心、そして妙な真剣さが混じる。男には、何が彼女の心を動かせるのかまるで理解できないのだ。

