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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第7章 清めの水

(この女がやったのか…?)

 浮かんでいた鬼火はすでにかき消えていたが、あたりは先ほどよりも明るくなっていた。

「美しさとは…なにも目に見えるものに限りません。内なる心や生き様(ザマ)にまでやどります」

「それが無ければ…お前の魂は手にはいらないと?」

「ええ。あなたがいくらわたしを辱めようともっ……痛みと屈辱で支配できるのは、肉体だけです」

「……なるほどな」

 小癪(コシャク)だが、巫女の言葉には納得できる部分もある。

 鬼は眉をひそめて山を眺めた。咲き誇る花を見ても、彼には揺さぶられる心が無い。むしろ、これらの花を踏みつけにし、台無しにしたいという衝動のほうが強かった。



 ──人と鬼では、根本的(コンポンテキ)に、分かり合えない領域があるという事だ。








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