この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
巫女は鬼の甘檻に囚われる
第6章 未知の怒り


 …──


 それは、蓬霊山(ホウレイヤマ)の屋敷から巫女が逃げ出す少し前──鬼は "境界" を離れ、久方ぶりに鬼界へと足を踏み入れていた。

 鬼界の花街は、人の世とは異なる、異様な賑わいに満ちていた。

 赤色に塗られた建物。色とりどりの提灯が揺れ、異形のモノノ怪たちが蠢く。角を生やした者、鱗に覆われた者、目が一つしかない者──それぞれが欲望の赴くままに動き回り、街は喧騒に包まれていた。

 賭け事で盛り上がる叫び声、争い合う罵声が路地に響き合い、酒と淫靡な香りが空気を重くする。

 その中心に、鬼はいた。

 高い所に置かれた座椅子に背を預け、遊女たちに囲まれながら酒を呷っていた。遊女たちは彼の美貌と妖力に引き寄せられ、媚びるように身を寄せる。

「鬼王さま、久々のご帰還でございますねぇ」

 蛇の鱗を持つ遊女が甘ったるい声で囁く。すると別の遊女──翼を生やした女が、酒を注ぎながら笑う。

「人界での探し物はとうとうお終いですか?」

「そうではない」

「では何をなさりに鬼界へ? また何か面白い遊びでも見つけたんですか?」

 鬼は杯を傾け、口元に軽薄な笑みを浮かべた。

「興味深い女を手に入れた。そいつに何か買い与えてやろうと思ったが……人間の嗜好など、検討もつかん」

「ほぉ!」

 遊女たちが一斉に目を輝かせる。

「鬼王さまのお眼鏡にかなうなんて、どんな玩具なんでしょうねぇ!」

「人間の女か? 具合はどうなんですかい?」と、角の生えたモノノ怪が興味津々に尋ねるが、鬼は答えず、ただ酒を飲み干した。

 遊女たちは羨ましげに囁き合う。何か買ってやるにしても、人間の好みなど、鬼界の者にはまるで理解できない。


/111ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ