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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第4章 囚われの巫女


 ──バタン


 戸が閉まる音が、静寂の屋敷に重く響く。

 ひとりとなった巫女は床に崩れ落ち、荒々しい呼吸を繰り返した。

「はぁっ……はぁっ………く」

 身体はまだ妖気の熱に侵され、頭は混乱と恐怖で満たされている。

 だが彼女の瞳には、清廉な光が宿っていた。それは他ならない、屈服を拒む意志の輝きだった。

(負けない……絶対に……!)

 彼女は震える手で床を這い、なんとか、散らばった衣服に手を伸ばした。

 袴(ハカマ)は鬼の爪に引き裂かれている。

 なので、まだ破れていない白襦袢を掴んで、少しずつ引き寄せる。汚された巫女服を身にまとうことで、わずかながら自分を取り戻そうとしたのだ。

 神器である錫杖は壊れ、まともには戦えない。

 それでも

 彼女はよろめきながら屋敷の奥へ這った。燭の光が揺れる中、唇を強く噛む。血の味が口に広がり、意識を鮮明にしてくれる。

 鬼は戻ってくるだろう。そして、再び彼女を辱め、支配しようとするだろう。

 だが、巫女は決意していた。どんなに身体が穢されようと、この魂までは渡さない。彼女は神の遣いとして…人の世を守る者なのだ。






 ──…





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