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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第4章 囚われの巫女

 巫女が目を覚ました時──そこは変わらぬ暗闇だった。

 横を向いて倒れた身体は、床に吸い付くように動かない。疲労による脱力だけじゃない。今、彼女がおかれている危機的状況への…無意識な拒絶からなのか。


「……っ」


 かすむ視界が少しずつ暗闇に慣れていった時

 広い部屋の四周の灯りが、ひとりでに灯(トモ)った。


「起きたな」


「──…!」


「そこへ跪(ヒザマズ)け──女」


 灯りの火が最後についた場所に、鬼の男が座っている。

 横たわる巫女より床が上がったそこに一脚の椅子があり、足を組んだ鬼がこちらを見下ろしていた。


「ぅ…!」

 本能が逃げたいと叫ぶ。

 それなのに、まともに動いたのは指先の関節ぐらいだった。

 引き寄せようとした足はかろうじて震えただけ。

「聞こえないか?跪けと命じたのだが」

「…ッ…ハァ、ハァ」

「無礼者め。お前でなければ即座に八つ裂きにしてくれる」

 勝手な物言いだ。彼女をこんな状態にしたのは他ならぬこの男だというのに。良識は通用しないらしい。

(少しも、動かない……)

 巫女はただ怯えた目を、上座に座る鬼へと向けて黙っていた。身体にはまだ力が入らず、まるで悪夢の残滓(ザンシ)に縛られているかのようだった。




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