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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第20章 呪いの侵食

 彼を取り囲むモノノ怪たちは、槍や刀を手に、憎悪の目を向ける。

「ソモソモ800年前に鬼界を襲ったとかいう呪いも、コイツらと同じ狐のガキが持ち込んだって言うじゃネェカ!」

「ナンダと!?」

「許せねェ! また同じように持ち込みやがったな!」

 混乱に陥ったモノノ怪たちは、互いに叫び合い、憎悪を狐族にぶつける。

 一匹が槍を振り上げた。


「ならこのキツネから呪いに喰わせてや──っ」



 ────ザンッ!



「……」

 ポタ...ポタ...ポタ...

 喚いていたモノノ怪の首が飛ぶ。

 血が地面に滴り、花街の騒ぎが静まりかえった。


「…黙れ、クズどもが」

「き、鬼王さま……!」


 現れた鬼王は、連中に目もくれなかった。

 彼は花街をうろつく呪われた個体に視線を向け、片手をひるがえした。

 妖術で生み出された黒い霧が生き物のように伸び、呪われたモノノ怪に巻き付く。すると霧は瞬時に鎖に変わり、ガシャンと音を立てて締め上げた。

 別の場所から鬼を襲おうとした数体も、同じように黒い鎖に絡め取られ、膝をつき、ひとつにまとめて拘束された。呪われた者たちの咆哮が、鎖の軋む音にかき消される。



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