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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第18章 捨てた名前

『 安心しろ 』
銀髪の少年が一歩前に出た。
利き手を構え、鋭い爪が哀しく光る。霧が彼の周囲で揺れ、別れを惜しみ…まとわりついた。
そして彼は言った。
『 俺も共に名を捨ててやる 』
『 ‥‥‥‥! 』
『 名など不要な、鬼の王になってやる。お前をのぞいて、誰のひとりも…──俺の名を呼べぬように 』
その言葉を耳にして、鎖に吊られた少年はかすかに微笑む。
『 それは‥‥君が‥‥孤独、だよ‥‥‥ 』
御堂の外の怒号が一瞬静まり、重く沈む。
銀髪の少年の爪が、ゆっくりと振り上げられた。
次の瞬間、鎖の軋む音と血の滴る音だけが…朽ちた御堂に鳴っていた。
……
──…
───……

