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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第17章 込み上げる想い

「は‥‥ぁ‥‥!はぁっ‥……ぁ……」
濡れたまつ毛が震え、頬には水滴と涙が混じり合い、弱々しい生命の兆しが戻った。彼女の呼吸はまだ乱れ、身体は冷たく震えているが、命の灯が再び点ったのだ。
「……!」
鬼は無言で、回復した巫女を見下ろしていた。
彼の瞳には、怒りと焦り、それと同時に理解しがたい感情が渦巻く。
鋭い牙がわずかに覗く口元は固く結ばれている。だが、上下に動いた喉元には奇妙な戸惑いが宿っていた。
彼を拒み、凛とした態度で立ち向かってきた彼女が、今はこうも無防備で壊れそうな姿でいる。
(こう見れば……この女も、弱い生き物なのだな)
いついかなる時も清らかで、強く振る舞う彼女が……実のところは脆く、儚い存在であったと思い知らされた。
そんな鬼の胸に広がるのは──。
(なんだ)
彼は戸惑っていた。彼女の命が消えかけた瞬間、胸を突いた感情。未知の波紋。
最強の存在として鬼界に君臨する彼には、無縁であった感覚。
「……俺は今、恐れを抱いたのか」
「……ッ……はぁ………う………あ」
鬼が独り言を呟いた時、巫女が目を開けた。

