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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第16章 鬼の葛藤

「必要であれば人界を探し、連れ戻しますが」

「──…」

 鬼は鏡をじっと見つめ、静かに呟いた。

「俺から逃げたならば、それはそれで、構わん」

「……」

「あの女は、俺にとって、…甘すぎる呪いだ」

「呪い…?」

「どれだけ執着し、支配し、蹂躙しようとも、あの女を手に入れられぬ。俺の方が力も妖気も上回っているのに、何故だ?わからん……」

 そこまで呟いた鬼は、後ろで控える式鬼へ、消えろと冷たく命じた。

 式鬼は一瞬躊躇い、言うかどうか迷ったすえ……去り際に忠告した。

「呪いの件が解決するまでは、鬼王さまもなるべく鬼界で過ごされたほうが宜しいでしょう。どうか鬼王さまご自身で、逃げた巫女を追い人界へ向かう事などなさりませんよう、お願いいたします」

「わかっている」

 忠告を最後に式鬼は影となって溶け、屋敷から消えた。



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