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愛の笛
第2章 同窓会

島の男が漁船でブッ飛ばしてサイパン島に送ってくれたお陰で、何とかビザが切れる前に帰国することが出来た。

久々の日本に降り立つと、
やけに魚の生臭い匂いに驚いた。

かつお節の香りを胸いっぱいに吸い込むと
日本に帰ってきたんだなあという思いが突き抜けた。

『みんなは元気にしているのかな?』

何気なしに大学時代の友人である衣笠に連絡してみると

- お~っ、草薙か?
久し振りじゃん、相変わらず各国を飛び回ってるのかい?
どうだ?久々に大学時代のツレを誘うから呑もうじゃないか -

「呑みたいのはやまやまだが、
あいにくと長いプー太郎生活で金欠でね」

- 金の事なら心配すんな
みんなは一流企業に就職しているし、お前一人ぐらいなら奢ってやるさ -

少し鼻につく言い方だったが、
タダ酒を呑めるのなら、こんなにありがたい事はない。
日時のセッティングを頼み、その日が来るのをイソイソと待ちわびた。

当日、約束の店に出向くと、悪友が予約してくれた店はドレスコードのある洒落た店だった。

『よかった、ネクタイをバッグに忍ばせておいて…』

ヨレヨレのネクタイ姿に、お店のボーイはあからさまに『お前のような男が来る店じゃないよ』という態度をした。

案内された個室には大学時代に仲の良かった面々が勢揃いしていた。

「いよっ!本日の主役のお出ましだぞ!」

衣笠が草薙を見つけて大きな声で全員に知らせてくれた。

「えっ?草薙くん?」

「ちょっと見ない間に痩せ細っちゃってさ」

「やべえなお前、ちゃんと風呂に入ってるのかよ~」

それぞれ好き勝手に草薙の容姿を弄ってくる。
確かに日焼けして草薙自身の風貌が変わってしまってはいたが、
それよりも学生時代とは打って変わったメンバーの姿に驚いた。
どこをどう見たって超エリート社員だったからだ。


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