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愛の笛
第1章 プレゼント

翌朝、窓から射し込む陽光で草薙は目を覚ました。
禁欲生活の煽りからか、一度の射精で満足できるはずもなく、処女を奪った少女の体を何度も味わったせいで寝過ごしてしまった。

「いけない!連絡船に乗り遅れる!!」

目覚めたのならもう一度だけ愛して欲しいと、少女が草薙の体にまとわりつく。

「ごめん!バージンを奪っておきながら心苦しいけれど帰国しなきゃいけないんだ!」

しがみつく少女を体から引き剥がすと
詰めかけのトランクにパスポートと貴重品だけを詰め込むと、
残りの衣服などは捨てるつもりで慌てて身支度を済ませて港に向かった。

だが、港に着いた時には一足違いで連絡船は沖合いに消えかけていた。

「そ、そんなあ…」

防波堤にガックリと膝をついて狼狽していると
背後から「心配スンナ、俺ノ船デ送ッテヤルサ」と
顔馴染みの青年が声を掛けてくれた。

「本当かい?それは助かる」

「連絡船ハ、岩礁ヲ避ケテ遠回リスルカラ、俺ノ船ノ方ガ速イヨ」

助かった…どうやらサイパンには早くたどり着けそうだ。

激しい波に揺れながら草薙を船に乗せてくれた青年が話しかけてくる。

「草薙サン、アナタ、長老カラ笛ヲ貰ッタロ?」

大きく揺れる船上で波の音に負けないぐらいに大きな声で青年が草薙に問いかけた。

「アノ笛、音ガ鳴ラナカッタロ?」

彼が言うには、あの笛は魔笛なのだそうだ。
男には音色が聞こえなくても、女には聞こえるのだそうだ。
長老が留守の時に、こっそり家に忍び込んであの笛を手にした事があったそうで、公園で意気揚々と笛を吹いたら近くにいた新婚の奥さんに言い寄られて困ったそうだ。

どうやら笛の音色は男には聞こえなくて、女には淫らな気分にさせる音を奏でるようだ。

「アノ時ハ困ッタヨ
新婚ノ奧サンニHシテイルノガ旦那ニバレテネ、
ボコボコニサレタヨ」

だから盗んだのを謝って長老に返したのだそうだ。

「イイカイ、アノ笛は女ノ前デ吹イチャダメダゾ」

なるほど、彼氏がいる女や既婚女性にはご法度だが、
言い換えればモノにしたい女の前で笛を吹けば
ヤリたい放題って訳じゃないか!

「ケドナ、笛ヲ吹イテ一時間以内ニ抱イテヤラナイト効力ガ失クナルカラ注意シナ」

まあ、真面目なあんたは悪用はしないだろうけどね。

そんな話を聞いているうちに船はサイパン島に着いた。


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