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第9章 ８月

石川はモニター画面を覗き、隣で小泉が
大型の一眼レフのレンズを、目の前のバスにカメラを
合わせ、シャッターに手を当て、タイミングを計るのを
感じる、目の前のバスの扉の締まる音の後、動き始めた
夏の日差しが背中を容赦なく襲う、首筋から背中に
汗が流れ落ちてくる、

・・・暑い！！・・・・

石川は心の中で呟き、モニターを覗き込む、
目の前のオレンジ色の路線バスが走り去り、
思わず息を飲みこんだ、

夏の日差しの下、公園の深い緑の木々を背景に
薄水色の傘の下、同じ色の和服を纏う綾乃の姿
傘を徐々に上げ、顔を見せて来る、濃い緑を背景に
立つ、薄水色の和服姿、真っ白に見える帯は
ズームにすると、小さな花を細かくあしらい
花弁を僅かな金糸が彩られている

凛とした立ち姿、日傘の下の潤んだ瞳が
石川を見つめて来る、石川は夢中でビデオを
操作し、遠景から映す綾乃の顔にビデオを合わせ
隣に立つ小泉の連続で切る、シャッターの音が
続いた

「　少し、公園を歩きましょうか　」