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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第3章 女中 千勢(ちせ)

 「お気遣いを有難う存じます。女中のお姉さまたちが、<精をお口で受けたり、飲んだりすると殿方がお喜びになる>と言っている意味が、よく分かりました。きっと、<肉体の快楽>だけではなくて、自分の隠れた気持ちを抑えずに、表に出す<精神の快楽>も加わるからですね。」

 「言われてみると、その通りだ。千勢はよく文学書を読んでいるそうだが、難しい言葉もよく知っていて、人の気持ちをそんな風に上手に表すことが出来るのか。驚いたよ。」

 「そのように言っていただくと、面はゆい気がしますが、嬉しゅうございます。」

 富田は、そのまま千勢を抱いて、ベッドまで歩き、優しく仰向けに寝かせた。富田が千勢に覆いかぶさると、柔らかいスプリングマットが深く沈み込み、穏やかな海の波のように、ゆったりと揺れた。
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