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天狐あやかし秘譚
第5章 天佑神助(てんゆうしんじょ)

☆☆☆
相変わらず私は腰が抜けて動けない。動けないことが分かっているのか、キョウコツはことさらゆっくり近づいてくる。
まずい、まずい・・・あんなので殴られたら死んでしまう。
目から涙が溢れ、身体が震える。腰が抜けていなくても多分動けない。
そして、ほぼ失禁しかけていた。
キョウコツが私の目の前に迫り、大きく右手を振り上げる。
もうダメ!!
ギュッと目をつぶり、せめても自分の身を守るべく両手で身体を隠すようにする。
ところが、いつまで経っても衝撃が来なかった。恐る恐る目を開けると、目をぎょろぎょろさせたキョウコツが拳を振り上げたまま止まっていた。心なしか、カタカタと全身が震えているように思えた。
なんで?
そう思った時、キョウコツの身体の中にいる清香ちゃんがこっちを見た・・・気がした。
もしかして・・・清香ちゃんが止めてくれている?
「おい!姉ちゃん、早く逃げっぞ!」
いつの間に復活したのか、ぐいと私の腕を御九里が引っ張る。私が離れると、キョウコツが大声で何事か叫びながら再び動き始めた。
御九里は私の腕を引きながら、耳元に手を当て何やら叫んでいた。
「だから!狂骨!?わかる?乙種なわけ!俺じゃあ、もたねえよ。え?何?左前(ひだりまえ)さん?2時間かかる!?バカヤロウ、死ぬわ!俺!」
ちくしょーと叫びながら私の手を引き、公園の木立の中に入り込む。
「この木叢(こむら) 物のな入そ 我ぞこもれり
この杜よ 姿ぞかくせ 声ぞ凪ぐべし」
御九里が懐剣を地面に突き刺し、呪言を唱える。
一段、周囲が暗くなったように感じた。
「こ・・・これ・・」
「結界・・・目眩ましの簡単なのだけど。狂骨はアホだから、これでちょっとは凌げる」
「な・・・なに・・アレ?」
「狂骨!狂った骨って書く凶悪な妖怪だ。ここ、昔処刑場かなんかだったんだな・・・ぬかったー」
公園の中央では狂骨が私達を探しているのか、ウロウロと歩き回っている。御九里が言うように確かにこの結界は目眩ましになっているようで、私達のことは相手から見えないようだ。
相変わらず私は腰が抜けて動けない。動けないことが分かっているのか、キョウコツはことさらゆっくり近づいてくる。
まずい、まずい・・・あんなので殴られたら死んでしまう。
目から涙が溢れ、身体が震える。腰が抜けていなくても多分動けない。
そして、ほぼ失禁しかけていた。
キョウコツが私の目の前に迫り、大きく右手を振り上げる。
もうダメ!!
ギュッと目をつぶり、せめても自分の身を守るべく両手で身体を隠すようにする。
ところが、いつまで経っても衝撃が来なかった。恐る恐る目を開けると、目をぎょろぎょろさせたキョウコツが拳を振り上げたまま止まっていた。心なしか、カタカタと全身が震えているように思えた。
なんで?
そう思った時、キョウコツの身体の中にいる清香ちゃんがこっちを見た・・・気がした。
もしかして・・・清香ちゃんが止めてくれている?
「おい!姉ちゃん、早く逃げっぞ!」
いつの間に復活したのか、ぐいと私の腕を御九里が引っ張る。私が離れると、キョウコツが大声で何事か叫びながら再び動き始めた。
御九里は私の腕を引きながら、耳元に手を当て何やら叫んでいた。
「だから!狂骨!?わかる?乙種なわけ!俺じゃあ、もたねえよ。え?何?左前(ひだりまえ)さん?2時間かかる!?バカヤロウ、死ぬわ!俺!」
ちくしょーと叫びながら私の手を引き、公園の木立の中に入り込む。
「この木叢(こむら) 物のな入そ 我ぞこもれり
この杜よ 姿ぞかくせ 声ぞ凪ぐべし」
御九里が懐剣を地面に突き刺し、呪言を唱える。
一段、周囲が暗くなったように感じた。
「こ・・・これ・・」
「結界・・・目眩ましの簡単なのだけど。狂骨はアホだから、これでちょっとは凌げる」
「な・・・なに・・アレ?」
「狂骨!狂った骨って書く凶悪な妖怪だ。ここ、昔処刑場かなんかだったんだな・・・ぬかったー」
公園の中央では狂骨が私達を探しているのか、ウロウロと歩き回っている。御九里が言うように確かにこの結界は目眩ましになっているようで、私達のことは相手から見えないようだ。

