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天狐あやかし秘譚
第35章 真実一路(しんじついちろ)
☆☆☆
目が覚めると、青と黒の沈む病室にいた。右腕には点滴がつけられているようで、針が刺さっているところがジクジク痛んだ。それ以外にも、身体中があちこち痛んでいるし、自分の体とは思えないほど重たかった。

ふと、足元の方に目をやると窓があった。そこから月明かりが差している。
青色の正体は、この月光だったようだ。

ここはどこだろう?
何が・・・あったのだろう?

ああ・・・そう言えば、私は、いつものように環が轢かれてしまった交差点に行っていて、そこで・・・妙な男の子に話しかけられて。
その男の子が、まるで環が生きているみたいに話してて・・・それで、それで・・・。

考えると、頭がツキンと痛んだ。

環を思い出したことで、あの日の出来事が鮮烈に脳内に溢れ出してくる。

キキキー!と軽ワゴン車が急ブレーキをかける音。
ゴン、と鈍い音とビシャアという何かが割れるような音。

耳についた音とともに、次々と嫌な記憶が蘇る。

ゴムが溶けたような匂いと、鉄臭い匂いが混ざった、吐き気を催すような嫌な臭気が立ち込める。人々が集まって来て、ガヤガヤと飛び交う言葉の意味はほとんど取れなかった。
サイレンの音、喧騒、怒声、靴音・・・全てがなんだか遠くの世界で起こっているようだった。

環は?環はどうしたの?

何か、良くないことが起こった、ということだけは分かった。

そこからは、まるで夢の中のようだった。
何人もの人から話を聴かれた。話す、話す、話す。
たしかに目の前で見たこと、聞いたことを話した。でも、まるで実感がなかった。
ふわふわと、水の中から世界を見ているようだった。

あの日のことが、どうしても取り返しがつかないことだった、と分かったのは随分時間が経ってから、だった。

環は事故で死んだ。
交差点への飛び出し事故。私の目の前で。
車に轢かれて、、、

環は、もう、還らない。

それが明確に認識されて、私は、私の心は、狂ってしまったのだ。

環・・・環!
なんで、私は手を伸ばして・・・環を引き戻さなかった?
なんで、あの時あと一歩先に進めなかった?
なんで、行くなと大きな声で叫ばなかった!?
私がちゃんとしてなかったから・・・私のせいで・・・私の・・・せいで・・・
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