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天狐あやかし秘譚
第95章 実事求是 (じつじきゅうぜ)
『なんか、あなたって先生みたい』
それは、素直な思いだった。
『え?そうかい?・・・はは・・・いいね、ボクは先生になりたいからね
 うん、・・・そう、本当の真実こそ、大事なことなのです・・・ってね』
『ふふふ・・・そうなのですね!』
『そうそう!元気が出た?』
『ハイなのです!私は、元気が出たのです!』
『そこは、「なのです」はいらないんじゃない?』

そう言われたけれど、私はこの言い回しがすっかり気に入ってしまっていた。
だから、『いいのです!私はこれが気に入ったのです』と言ってふふふと笑った。

ふふふ・・・はははは・・・・

そんな私を見て、彼も笑った。
二人は縁側で、笑いあっていた。

嬉しかった。とてもとても、嬉しかった。
きれいな魂の貴方とまた会いたいと、心の底から思っていた。

だから私は彼に手を振って言った

『また会いに来てください・・・宝生前さん!』

これは、昔々の記憶
早春のお家の縁側での優しい出来事・・・

私の心の奥に沈んで、いつもは思い出すことはないけれども、大事な、大事な、私を形作っている記憶だった。
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