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天狐あやかし秘譚
第95章 実事求是 (じつじきゅうぜ)
☆☆☆
「かんぱーい・・・なのです!」
チン、とカクテルグラスが触れ合う。
私と宝生前は約束通り、京王プラザホテル2階にあるメインバー『ブリアン』にいた。
バーカウンターに座った私達の前にはチーズの盛り合わせとソーセージが置かれていた。注文したカクテルは、彼がギムレット、私がサルベージというカクテルだった。サルベージとはSDGsをテーマにしたウォッカベースのカクテルだそうだ。
喉を通る爽やかな味わい。
薄暗い照明の中、なおさらかっこよく見える彼の顔を見て、表情が崩れるのを止めることができない。
「へへへへ・・・今日は子どものお世話までしてもらっちゃって・・・すごく、助かったのです」
「まさか、陰陽寮の仕事で子守があるとは、思いませんでしたよ」
そう言って微笑む彼だったが、なかなかどうして、子どもの相手が上手だった。それを眺めながら、なんだか将来は良いパパになりそう、などと思ったのは内緒だ。
私達がこうして約束通りバーで杯を傾けているということは、事件は解決した、ということである。結局、『直日の祝』は解かれることはなく、彼は今日、妻と子と一緒に、地元の家に帰っていった。
「二人はどうなるのでしょうねえ・・・」
私がポツリと呟くと、宝生前が少し驚いたような表情を見せる。
「どうなるかわかって、ああ言ったんじゃないのですか?」
「本当のことを知ることが大事・・・そう言ったのは、別に計算づくってわけではなかったのです。彼が嘘をつき続けるか、それとも、やめるか・・・それは彼らが決めることなのです。彼らの『真実』が決めることなのです」
私達が昼間にしたこと、それを少し説明しよう。
『直日の祝』とは、神直毘神(かみなほびのかみ)に願いを立てることで起こる一種の祝福だ。その祝福を受けたものは『嘘がつけなくなる』のだ。
私が占いで見たのは、彼が抱えている問題は『直日の祝』のせいであること、その願を掛けたのが妻である千遥であること、そして、その原因が、政治家に転身したことで自分の性に合わない『嘘』をつかなければならなくなった彼を救いたい、という妻の思いだったこと、だった。
「かんぱーい・・・なのです!」
チン、とカクテルグラスが触れ合う。
私と宝生前は約束通り、京王プラザホテル2階にあるメインバー『ブリアン』にいた。
バーカウンターに座った私達の前にはチーズの盛り合わせとソーセージが置かれていた。注文したカクテルは、彼がギムレット、私がサルベージというカクテルだった。サルベージとはSDGsをテーマにしたウォッカベースのカクテルだそうだ。
喉を通る爽やかな味わい。
薄暗い照明の中、なおさらかっこよく見える彼の顔を見て、表情が崩れるのを止めることができない。
「へへへへ・・・今日は子どものお世話までしてもらっちゃって・・・すごく、助かったのです」
「まさか、陰陽寮の仕事で子守があるとは、思いませんでしたよ」
そう言って微笑む彼だったが、なかなかどうして、子どもの相手が上手だった。それを眺めながら、なんだか将来は良いパパになりそう、などと思ったのは内緒だ。
私達がこうして約束通りバーで杯を傾けているということは、事件は解決した、ということである。結局、『直日の祝』は解かれることはなく、彼は今日、妻と子と一緒に、地元の家に帰っていった。
「二人はどうなるのでしょうねえ・・・」
私がポツリと呟くと、宝生前が少し驚いたような表情を見せる。
「どうなるかわかって、ああ言ったんじゃないのですか?」
「本当のことを知ることが大事・・・そう言ったのは、別に計算づくってわけではなかったのです。彼が嘘をつき続けるか、それとも、やめるか・・・それは彼らが決めることなのです。彼らの『真実』が決めることなのです」
私達が昼間にしたこと、それを少し説明しよう。
『直日の祝』とは、神直毘神(かみなほびのかみ)に願いを立てることで起こる一種の祝福だ。その祝福を受けたものは『嘘がつけなくなる』のだ。
私が占いで見たのは、彼が抱えている問題は『直日の祝』のせいであること、その願を掛けたのが妻である千遥であること、そして、その原因が、政治家に転身したことで自分の性に合わない『嘘』をつかなければならなくなった彼を救いたい、という妻の思いだったこと、だった。

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