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天狐あやかし秘譚
第95章 実事求是 (じつじきゅうぜ)
☆☆☆
昼過ぎ、昨日と同じ時間、同じ場所で私と宝生前は江藤と面会をしていた。
江藤は昨日と違うがやはり仕立ての良いスーツを着ていた。髪型はもちろん昨日同様、ビシッ整えており、夜の街に消えていったときの怪しげな様相は欠片も見せていなかった。
「随分、早い面会でしたね・・・で?私の呪いは、解けるんですか?」
料理も来ないうちから江藤が若干冷めたような口ぶりで聞いてくる。まあ当然だろう。二回目に会うときには調査結果を言う、みたいなことを言ってあったので、あまりにも早すぎる再面会の申し出に、『実は断られるのではないか』と疑っている様子だった。
実際、再調査をするというのは時間を稼ぐための便法であり、実際は、全ての答えは昨日の面会の時点ですでに出揃っていたのだ。
あとは、それをどう彼に伝えるか、だけが思案のしどころだったのだ。
んんっ!と私は咳払いをする。
「結論から申しますと、あなたには呪いはかかっていません」
え?っと江藤が目を見開く。
実際、彼に穢れはまとわりついていない。何となれば、その横にいる菊理媛も普通の顔をしている。神は穢れを極端に嫌うものだ。その神が同じ部屋にいられること自体、彼が呪われていないという強力な証拠である。
「で・・・でも、私は!」
実際に困っている、そうだろう。おそらく、とても困っているに違いない。
「当方の調査によると、あなた様はここ一か月、ずっとこちらにご滞在ですね?議員活動の殆どはメールを介して秘書経由で実行。どうしても人前に出るときにはマスクを付けて風邪気味だと言って会話を避けていた」
うぅっ・・・と江藤が言葉をつまらせる。
別に質問していないのだからいいだろう。
「あなたが呪いを実感したのも、その頃からなのでしょうね。喋ることは問題なかったのでしょうし、メールも書けた。でも、『質問』をされるわけにはいかなかった。それは、質問をされると困ったことになるから、です。」
ゴクリとつばを飲む。彼の額に汗が滲んでいるように見えた。
「それこそが直日の祝(はふり)なのです」
「なおいの・・・はふり・・・?」
昼過ぎ、昨日と同じ時間、同じ場所で私と宝生前は江藤と面会をしていた。
江藤は昨日と違うがやはり仕立ての良いスーツを着ていた。髪型はもちろん昨日同様、ビシッ整えており、夜の街に消えていったときの怪しげな様相は欠片も見せていなかった。
「随分、早い面会でしたね・・・で?私の呪いは、解けるんですか?」
料理も来ないうちから江藤が若干冷めたような口ぶりで聞いてくる。まあ当然だろう。二回目に会うときには調査結果を言う、みたいなことを言ってあったので、あまりにも早すぎる再面会の申し出に、『実は断られるのではないか』と疑っている様子だった。
実際、再調査をするというのは時間を稼ぐための便法であり、実際は、全ての答えは昨日の面会の時点ですでに出揃っていたのだ。
あとは、それをどう彼に伝えるか、だけが思案のしどころだったのだ。
んんっ!と私は咳払いをする。
「結論から申しますと、あなたには呪いはかかっていません」
え?っと江藤が目を見開く。
実際、彼に穢れはまとわりついていない。何となれば、その横にいる菊理媛も普通の顔をしている。神は穢れを極端に嫌うものだ。その神が同じ部屋にいられること自体、彼が呪われていないという強力な証拠である。
「で・・・でも、私は!」
実際に困っている、そうだろう。おそらく、とても困っているに違いない。
「当方の調査によると、あなた様はここ一か月、ずっとこちらにご滞在ですね?議員活動の殆どはメールを介して秘書経由で実行。どうしても人前に出るときにはマスクを付けて風邪気味だと言って会話を避けていた」
うぅっ・・・と江藤が言葉をつまらせる。
別に質問していないのだからいいだろう。
「あなたが呪いを実感したのも、その頃からなのでしょうね。喋ることは問題なかったのでしょうし、メールも書けた。でも、『質問』をされるわけにはいかなかった。それは、質問をされると困ったことになるから、です。」
ゴクリとつばを飲む。彼の額に汗が滲んでいるように見えた。
「それこそが直日の祝(はふり)なのです」
「なおいの・・・はふり・・・?」

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