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天狐あやかし秘譚
第95章 実事求是 (じつじきゅうぜ)
☆☆☆
昨晩の回想を終えたころ、私の身支度も整っていた。丁度、そのタイミングで、ぴんぽんと玄関ベルの音が鳴る。扉を開けると、昨日とは違うスーツに身を包んだ宝生前が立っていた。約束通りの時間だし、約束通り朝食を食べては来なかった。なので、二人で予定どおりに朝食会場に向かったのだが・・・。
「あ・・・あの・・・なにか、体の具合が悪い・・・ですか?」
ぶっすー・・・
としていたと思う。
和朝食の小鉢をつつきながら、ものすごく不満な顔をしてたようだった。そんな私の様子を見て、ヴィーガン用のブレックファストをいただいていた宝生前も、だんだん心配になってきたらしかった。
「あ・・・の・・・土門・・・様?」
チョンチョンと焼き魚をつついてご飯を口に運びながら、じとーっと彼のことを見つめてしまう。その視線が彼を更に動揺させたらしく、ちょっと普段では見られないほどあたふたとした表情を浮かべていた。私の方は、その顔を見て、ああ、ものすごく心配してくれているんだ・・・と思ってしまい、逆になんだか楽しくなってきてしまっていた。
しょうがないのです・・・そろそろ許してあげるのです。
「昨日、宝生前さんが帰っちゃって、私は寂しかったのです」
「なっ・・・!」
「朝、目が覚めて、一人だったので、泣きそうになったのです」
じーっと目を見つめて言ってやる。本当にそうだ。朝、目覚めて、貴方の顔があったら私はどんなに幸せだったことだろう。空っぽのベッドがあんなにも心を冷やすものだということを私はこの年で初めて知ってしまった。
「いや、・・・だって・・・それは・・・」
「埋め合わせ・・・してほしいのです!」
「う・・・埋め合わせ?」
「今晩、ここのメインバーで奢って欲しいのです!」
宝生前とは一度一晩中飲み明かしたことがある。お泊りがダメでも、せめてこれなら・・・と思ったのだ。ぐっと見つめる私から、彼はやや顔を赤らめて、すいっと目をそらした。
「の・・・飲むだけですからね・・・っ!」
やった!
昨晩の回想を終えたころ、私の身支度も整っていた。丁度、そのタイミングで、ぴんぽんと玄関ベルの音が鳴る。扉を開けると、昨日とは違うスーツに身を包んだ宝生前が立っていた。約束通りの時間だし、約束通り朝食を食べては来なかった。なので、二人で予定どおりに朝食会場に向かったのだが・・・。
「あ・・・あの・・・なにか、体の具合が悪い・・・ですか?」
ぶっすー・・・
としていたと思う。
和朝食の小鉢をつつきながら、ものすごく不満な顔をしてたようだった。そんな私の様子を見て、ヴィーガン用のブレックファストをいただいていた宝生前も、だんだん心配になってきたらしかった。
「あ・・・の・・・土門・・・様?」
チョンチョンと焼き魚をつついてご飯を口に運びながら、じとーっと彼のことを見つめてしまう。その視線が彼を更に動揺させたらしく、ちょっと普段では見られないほどあたふたとした表情を浮かべていた。私の方は、その顔を見て、ああ、ものすごく心配してくれているんだ・・・と思ってしまい、逆になんだか楽しくなってきてしまっていた。
しょうがないのです・・・そろそろ許してあげるのです。
「昨日、宝生前さんが帰っちゃって、私は寂しかったのです」
「なっ・・・!」
「朝、目が覚めて、一人だったので、泣きそうになったのです」
じーっと目を見つめて言ってやる。本当にそうだ。朝、目覚めて、貴方の顔があったら私はどんなに幸せだったことだろう。空っぽのベッドがあんなにも心を冷やすものだということを私はこの年で初めて知ってしまった。
「いや、・・・だって・・・それは・・・」
「埋め合わせ・・・してほしいのです!」
「う・・・埋め合わせ?」
「今晩、ここのメインバーで奢って欲しいのです!」
宝生前とは一度一晩中飲み明かしたことがある。お泊りがダメでも、せめてこれなら・・・と思ったのだ。ぐっと見つめる私から、彼はやや顔を赤らめて、すいっと目をそらした。
「の・・・飲むだけですからね・・・っ!」
やった!

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