この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第95章 実事求是 (じつじきゅうぜ)
『宝生前さんは・・・素敵なのです』
口から本音が漏れてしまう。昔から私はそうだった。
自分の思いをちゃんと伝える、それが信条だったし、そもそも、考えたことはそのまま口から出てしまうことが多かった。

そんな私の言葉に、宝生前が面食らったように口元に手をやる。若干耳が赤くなっているのは、多分、私の贔屓目ではないはずだ。

一言、言葉が漏れると、つぎつぎと私の口は心の中の思いを紡ぎ出していってしまう。今は仕事中だから・・・と少しの理性が止めようとしている気もしたが、その力よりも遥かに強い想いが溢れてきてしまう。

『さっきも、色々とフォローしてくれて、うれしかったのです』
『貴方と一緒にお仕事ができて、こうして一緒にいられて、私は幸せ・・・なのです』
『私はあなたのことが・・・』

座っていたベッドから腰が浮きかける。
その時、私の霊覚が夜魂蝶の動きを敏感に感じ取った。

『あ・・・っ!』
少し上の方を見たからだろうか、私の動きから宝生前も事態を察したらしい。私は素早く夜魂蝶の視覚に、自身のそれをチューニングした。するとたちまちのうちに、私の脳内に夜魂蝶の見ている光景が投影される。どうやら、夜魂蝶は江藤の部屋の扉が開いたのを検知したようだった。

『土門様?』
扉からは黒のスラックスに黒のワイシャツ、そしてラフな黒ジャケットという黒尽くめの姿をした男が一人、出てきていた。髪型はヘアワックスで毛先を遊ばせる感じにしており、少し茶色がかったメガネを掛けていた。
変装をしているようだが、夜魂蝶を騙すことはできない。蝶が感じる魂の気配は明らかに江藤二重のものだった。

『江藤が、部屋を出たのです・・・ちょっと、格好を変えていて・・・』
口で服装を説明しようとしたが、どう言ったらいいのかわからない。ええい、ここはしょうがない・・・と思ってくださいね、宝生前さん!

『え?ど、土門様・・・?!』

私はおもむろに宝生前に近づくと、自分の頬を彼のそれにピタッとくっつけた。チークダンスもかくやというほどの接近である。彼の体臭を強く感じてしまい、一瞬どきりとしてしまうが、努めて平静なふりをする。

『しっ!夜魂蝶の視覚を共有するのです!』
『私は言葉で言っていただければ・・・』
/1348ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ