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天狐あやかし秘譚
第95章 実事求是 (じつじきゅうぜ)
大抵の人は自分の有利になる未来を知りたいとか、敵の弱点を知りたいとか、そんなことばかりを考えている。もっと直接的には、これとこれ、どっちの株が値上がりするか、なんてことを聞いてきた親戚もいた。そんな人がそばに来ると、見ようと思わなくても、その汚らしい魂の色が目に飛び込んでくる。欲にまみれた人間の魂の色は大抵くすんで、濁っていた。

なので私は、その色を見るだけで、気分が悪くなるようになっていたのだ。

できるだけ、人とは関わりたくない。
たった8歳にして、私はそんな結論に達していた。

学校に行く必要もないと言われていた私は、日がな一日を自分にあてがわれた離れで、一人でいるようになった。一人の時間は良かった。人の醜い部分を見ることもない。嫌な気分にさせられることもなかった。少し寂しくはあったけれども、四季移ろう庭を眺めたり、空に浮かぶ雲を数えたり、好きな本を読んだりして過ごしていた。

ただ、今日みたいな両親が主催するこの『託宣会』だけは別だった。月に1度開かれるこの会には、父親や母親が縁故を有している人たちが列をなして集まってくる。この日ばかりは仕方がない。占いの力を存分に発揮せざるをえなかった。さすがに世話になっている分、父母の頼みは断りにくかった。

今は、その託宣会の午前の部が終わったところだった。午後の部までの間は、やっと私に与えられた休憩時間だった。

やれやれ、一人で過ごせる・・・
そんな風に思って縁側に座っていた時、その男性が来た、というわけだ。

近くに来ないでほしいと思ったけれども、父の客の関係者だ。無礼な態度を取ればあとで父母に迷惑がかかる。幼いながらにそう思った私は、とりあえず黙っていた。

『君には、この空がどう見えているの?』

その人は、後ろ手に縁側に手をついて空を見上げながら言った。その言葉がちょっと意外で、私はその人の方をまっすぐに見てしまった。こうなると、当然その人の魂の色が目に飛び込んできてしまう。しまった、と思って、目をつむりかけたが、すぐにあれ?と思った。

その人の魂の色は、きれいなブルーだったのだ。
それが、あまりにもきれいなブルーだったので、思わず私は彼のした質問に答えてしまっていた。
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