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天狐あやかし秘譚
第94章 神機妙算(しんきみょうさん)
ここで、お腹など鳴らしたら乙女として一生の不覚なのです!
下腹に力を入れてなんとか耐える。依頼主より早く箸をつけるわけにもいかず、相手が食べ始めるのを待ってはいたが、相手はさほど腹が減っていないらしい。おもむろに話を始めた。
「さて・・・早速ですが、私にかかった呪いを解いていただきたいのです」
「え・・・」
えっと呪いとは?と聞きかけて慌てて『質問するな』というメールの文言を思い出し、言葉を飲み込んだ。江藤がこちらの気持ちを察したような表情を浮かべる。
「細かなことをお聞きになりたいでしょうけど・・・その、どうか、何も聞かずになんとかしていただきたい」
「そ・・・それはムリなのです」
思わず抗議の声が漏れる。これは質問ではないからセーフか?
「貴女がそう言うのももっともなことだ。私も、質問されること以外なら言っていただければ従う。身体を見せろと言われれば見せるし、荷物を改めたいと言われれば可能な限り・・・そうする。もちろん、手帳などプライベートなところは見せられないところもあるが・・・」
一体、どういうことでしょうか?
とりあえず、じっと江藤の周辺を霊視してみる。おそらく隣の宝生前も同じことをしているのだろう。彼もまた無言で江藤の周辺を見つめていた。
・・・霊視結果は・・・特に引っかかるものはないっと・・・
「わかりました、では、占術なら構いませんか?あなたのことについて卦を立てても?」
「構わない」
いかん、これは質問か?と思ったが、彼は気にしなかったようだ。そのまま会話が続いていく。
「では頼む」
江藤は微動だにせずにそう言ってくる。
いや、ちょっと待てい!
ちらりとテーブルに目を落とす。ダメだ、このままでは・・・お腹が、鳴るっ!
「あの・・・せっかくご用意いただいたものですし、こちらのお料理を頂いてからでもよろしいですか?質問さえしなければ、世間話程度は構わないのでしょう?」
宝生前がナイスなフォローをしてくれる。きっと私の困った顔を察してくれたに違いない。こういうところ、こういうところなのです!我が衆の男どもにはないこの気遣いこそが、大人の男の魅力なのです。
「そ、そうですね・・・わかりました」
どうやら江藤も納得してくれたようだった。こうして私は、かろうじてがっつくことなく、遅めの昼食にありつくことができた。
下腹に力を入れてなんとか耐える。依頼主より早く箸をつけるわけにもいかず、相手が食べ始めるのを待ってはいたが、相手はさほど腹が減っていないらしい。おもむろに話を始めた。
「さて・・・早速ですが、私にかかった呪いを解いていただきたいのです」
「え・・・」
えっと呪いとは?と聞きかけて慌てて『質問するな』というメールの文言を思い出し、言葉を飲み込んだ。江藤がこちらの気持ちを察したような表情を浮かべる。
「細かなことをお聞きになりたいでしょうけど・・・その、どうか、何も聞かずになんとかしていただきたい」
「そ・・・それはムリなのです」
思わず抗議の声が漏れる。これは質問ではないからセーフか?
「貴女がそう言うのももっともなことだ。私も、質問されること以外なら言っていただければ従う。身体を見せろと言われれば見せるし、荷物を改めたいと言われれば可能な限り・・・そうする。もちろん、手帳などプライベートなところは見せられないところもあるが・・・」
一体、どういうことでしょうか?
とりあえず、じっと江藤の周辺を霊視してみる。おそらく隣の宝生前も同じことをしているのだろう。彼もまた無言で江藤の周辺を見つめていた。
・・・霊視結果は・・・特に引っかかるものはないっと・・・
「わかりました、では、占術なら構いませんか?あなたのことについて卦を立てても?」
「構わない」
いかん、これは質問か?と思ったが、彼は気にしなかったようだ。そのまま会話が続いていく。
「では頼む」
江藤は微動だにせずにそう言ってくる。
いや、ちょっと待てい!
ちらりとテーブルに目を落とす。ダメだ、このままでは・・・お腹が、鳴るっ!
「あの・・・せっかくご用意いただいたものですし、こちらのお料理を頂いてからでもよろしいですか?質問さえしなければ、世間話程度は構わないのでしょう?」
宝生前がナイスなフォローをしてくれる。きっと私の困った顔を察してくれたに違いない。こういうところ、こういうところなのです!我が衆の男どもにはないこの気遣いこそが、大人の男の魅力なのです。
「そ、そうですね・・・わかりました」
どうやら江藤も納得してくれたようだった。こうして私は、かろうじてがっつくことなく、遅めの昼食にありつくことができた。

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