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天狐あやかし秘譚
第92章 寤寐思服(ごびしふく)
「あ・・・。ひ・・・ぐらし・・・さん?」

いやいやいや・・・なんで?何しに?
それより、何、その格好!?

俺は軽くパニクっていた。おそらくカラコンを入れているのだろう。目は榛色(はしばみいろ)がかって見えた。その姿はどこからどう見ても、普段の様子からは想像がつかないほど・・・なんというか・・・

硬直している俺の態度をどう勘違いしたのか、日暮は色々と言い訳をし始めた。

「あ、いや、その、手を怪我しているとお伺いしまして・・・それで、その、きょ・・・今日、び・・・ビーフシチューを作るり・・・作りすぎちゃったから、そのお裾分け・・・というか、あわよくば一緒に食べられたら・・・じゃなくて・・・この間、助けてもらったお礼として、それから・・・えーと・・・その・・・」

しどろもどろの上、噛みまくりだった。

その様子に、追い返そうと思った気勢がすっかり削がれてしまう。ついでに、脱力したせいか、ぐぐぅ〜っと腹まで鳴ってしまった。トートバックの中身はどうやらビーフシチューのようだ。俺の腹の虫がそのいい匂いを嗅ぎつけてしまったのは確かだった。

「あ!・・・その・・・ば、バゲットも持ってきたし、あと、さ、サラダもあるんで、すぐに食べれるというか・・・も、もしよろしければ、う、腕が動かないと不便かな・・・って思うんで、ご用意とかも、お、お手伝い差し上げたく存じ上げ候・・・」

侍かよ!と突っ込みたくなるのを我慢した。

日暮は確かに先輩だし、先日、助けられたのは俺の方なのだが、なんだか笑ってしまった。何よりも、あの葬儀の日、日暮に抱きしめられた時の感触や彼女の身体から立ち上ってきたいい匂いの記憶が残っていなかったといえば嘘になる。

だが、誓って言うが、この時の俺には、断じてやましい気持ちはなかった。そう断言できる。純粋に、こんな時くらい、人の好意に甘えても・・・そんな気持ちだったのだ。

部屋に通すと、狭いキッチンとあまり量がない食器を見て、少し首を傾げるような仕草をしたが、彼女はテキパキと準備をし始めた。冷蔵庫の中の食材を見て、少しお料理していい?と聞かれたので、頷くと、トートバックからエプロンを取り出して身につけ、トントンと軽快な包丁の音をさせて、何やら作り始めた。

「御九里さんは、お部屋で座っていてくださいね」
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