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第31章 目元



「……言った? 俺が?」

「言ったよ」



 ああ、覚えてないんだ。
馬鹿みたい。
相馬は覚えてもいないようなどうでもいい過去を、独りで勝手に気にして馬鹿みたい。

 相馬のこと、必死で好きにならないように頑張って、馬鹿みたい。



 ごめん、困らせたいわけじゃない、時間だけちょうだい、すぐ抑え込むから。
喉が引きつって、それだけ相馬に言う暇も与えてもらえない。

顔を伏せていて、相馬が立ち上がったのにも気づかなかった。



相馬が私の側のベンチに来て、私の肩を抱き寄せた。

「ごめんな、何度も泣かせて」



 ……ほんと。



 この一週間だけで、私はいったい何度泣いただろう。


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