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ヒヤシンスの恋
第2章 薔薇の秘密

「…怪我…」
菫は驚いた。
少なくとも、菫の耳には染布が奏でるピアノの音色は美しく、怪我をしている状態とは全く思えなかったからだ。
「…怪我はかなり回復はしました。
傍目にはなんともないように…。
けれど、プロのピアニストを目指す者にとっては致命的な怪我です。
繊細な指の動きは難しくなりました。
医師は、日常生活においては何も不自由はないと。
ピアノも一般のひとが趣味で楽しむ程度ならば、問題なく機能していると…。
けれどそれでは駄目なのです。
染布はプロの…世界で活躍するようなピアニストを目指していたのですから。
そしてそれは決して夢ではなかった。
弟には天賦の才能があるのです。
染布の指先からは、歌うように美しい音が流れ出す。
それは間違いなく稀有な才能だ」
…それを…それを…
「あの恋人が、すべてを奪ったのです」
尊文の美しく男性的な手が、強く握り合わされ、テーブルの上に叩きつけられた。
菫は驚いた。
少なくとも、菫の耳には染布が奏でるピアノの音色は美しく、怪我をしている状態とは全く思えなかったからだ。
「…怪我はかなり回復はしました。
傍目にはなんともないように…。
けれど、プロのピアニストを目指す者にとっては致命的な怪我です。
繊細な指の動きは難しくなりました。
医師は、日常生活においては何も不自由はないと。
ピアノも一般のひとが趣味で楽しむ程度ならば、問題なく機能していると…。
けれどそれでは駄目なのです。
染布はプロの…世界で活躍するようなピアニストを目指していたのですから。
そしてそれは決して夢ではなかった。
弟には天賦の才能があるのです。
染布の指先からは、歌うように美しい音が流れ出す。
それは間違いなく稀有な才能だ」
…それを…それを…
「あの恋人が、すべてを奪ったのです」
尊文の美しく男性的な手が、強く握り合わされ、テーブルの上に叩きつけられた。

