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淫夢売ります
第45章 仮面の夜会/三夜目:ゲリエール
二杯のマティーニが届く。デュークがひとつ私に手渡してくれた。
「まだ、戸惑ってらっしゃいますか?マドモアゼル?
 とりあえず飲みましょう・・・。何、すぐに馴染みますよ・・・」
チンとグラスが合わさる澄んだ音がした。

マティーニというカクテルを初めて飲んだが、柑橘系の香りが鼻を抜け、後味は爽やかな苦味がある。喉を落ちるときに灼けるような感じがするところを見ると、相当の度数であるようだった。先程、デュークが『薄め』でと言ってくれなかったら、もっと度数が高いものが出てきたのかもしれない。そうなったら、飲めなかったかもしれないと思うと、デュークの気遣いには感謝するべきだろう。

「一体ここは・・・?」

胃に落ちたアルコールのお陰で、少し落ち着いたような気がした。なので私は、根本的な疑問を女からエスコート役と言われていた彼に聞いてみることにした。

「不思議なことをお聞きになる・・・。どういう店か知らずに貴女は来たとでも言うのですか?」

実際そのとおりなのだが、そう言われてしまうと「そうだ」とは答えにくくなってしまう。

「いえ・・・その、想像していたよりも・・・すごくて・・・」
「想像していたより?どういうのを想像していたのですか?」

そう聞かれてしまうと、なおさら困る。実際は気づいたら入店していたからだ。どうしよう、このままだと自分が不利な立場に置かれてしまうような気がする。話題をそらしたほうがいいだろうか?

「デュークさんは、ここではどういったプレイを?」

そう、これなら、私がここについて何も知らないということにはならないし、かつ、質問をすることで話題をデュークのそれに向けることができる。
我ながら、名案だと思った。

「私のプレイスタイル?・・・ああ、そうですね、私のことをもう少しお話したほうがいいかもしれないですね。互いのことを知り合うのは大事なことですからね」
「ええ・・・」

緊張をほぐすため、私は更にマティーニを喉に流し込む。なるべく動揺を気取られないように、ゆったりと構えるよう意識していた。
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