この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
淫夢売ります
第31章 白の花園:開く扉

☆☆☆
夏の夕暮れ。昼と夜との間で、ヒグラシが忙しく鳴いていた。
学校のビオトープにある大きな樹の下。私と紀美子ちゃんが一番たくさん遊んだ思い出の場所だ。
私は、夏休みに引っ越さなきゃいけなくなった。
私自身、ほんの一週間前に聞かされたことだった。
嫌だった。
紀美子ちゃんが好きで、好きで、ずっと一緒にいたかったから。
でも、私が引っ越しに反対したって無駄なことも知っていた。
もし反対したとしても、お父さんやお母さんを悲しませるだけだと知っていた。
だから、私は我慢することにした。
でも、引っ越す前にどうしても、この気持ちを紀美子ちゃんに伝えたかった。
この1週間、ずっと考えていた。
自分の紀美子ちゃんへの気持ち。
ずっと友達でいよう・・・
違う
お手紙書くね、お返事ちょうだい・・・
違う
遊びに来てね・・・
そうじゃない!
もっと違う・・・もっと、もっと、違うこと。
私は紀美子ちゃんの髪に触れたかった。
手を握りたかった。
頬に触りたかった。
抱きしめたかった。
そして・・・キス・・・したかった。
言わなきゃ、伝えなきゃ。
今、誰もいない、この時間に、このときに、このチャンスに!
心臓が早鐘のように打つ中、私は、紀美子ちゃんに向かい合っていた。
大きなビオトープの樹の下。
私は、黒い七分丈の上着に白いくまのプリント、黒のチェックのスカートという出で立ちだった。
『私、夏に引っ越すの』
ぎゅっと手を握りしめる。紀美子ちゃんはびっくりしたような表情をしていた。
『え?ひろちゃん、引っ越しちゃうの?』
『うん・・・』
『遠い所?』
『うん・・・』
『そう・・・なんだ・・・』
紀美子ちゃんは言葉が繋がらなかったみたいだった。後ろ手に手を組んで、俯いていた。
長いきれいな髪の毛が、ぱさりと顔にかかった。
その瞬間、たまらなくいい匂いがした。
『これが・・・ちゃんと遊べる最後かもしれないの。だから・・・』
ドキン、と心臓が跳ね上がる。
『大好きなの・・・キス・・・していい?』
その瞬間、ヒグラシたちが黙り込む。
そして、ざあっと音を立てて、風が吹いた。
夏の夕暮れ。昼と夜との間で、ヒグラシが忙しく鳴いていた。
学校のビオトープにある大きな樹の下。私と紀美子ちゃんが一番たくさん遊んだ思い出の場所だ。
私は、夏休みに引っ越さなきゃいけなくなった。
私自身、ほんの一週間前に聞かされたことだった。
嫌だった。
紀美子ちゃんが好きで、好きで、ずっと一緒にいたかったから。
でも、私が引っ越しに反対したって無駄なことも知っていた。
もし反対したとしても、お父さんやお母さんを悲しませるだけだと知っていた。
だから、私は我慢することにした。
でも、引っ越す前にどうしても、この気持ちを紀美子ちゃんに伝えたかった。
この1週間、ずっと考えていた。
自分の紀美子ちゃんへの気持ち。
ずっと友達でいよう・・・
違う
お手紙書くね、お返事ちょうだい・・・
違う
遊びに来てね・・・
そうじゃない!
もっと違う・・・もっと、もっと、違うこと。
私は紀美子ちゃんの髪に触れたかった。
手を握りたかった。
頬に触りたかった。
抱きしめたかった。
そして・・・キス・・・したかった。
言わなきゃ、伝えなきゃ。
今、誰もいない、この時間に、このときに、このチャンスに!
心臓が早鐘のように打つ中、私は、紀美子ちゃんに向かい合っていた。
大きなビオトープの樹の下。
私は、黒い七分丈の上着に白いくまのプリント、黒のチェックのスカートという出で立ちだった。
『私、夏に引っ越すの』
ぎゅっと手を握りしめる。紀美子ちゃんはびっくりしたような表情をしていた。
『え?ひろちゃん、引っ越しちゃうの?』
『うん・・・』
『遠い所?』
『うん・・・』
『そう・・・なんだ・・・』
紀美子ちゃんは言葉が繋がらなかったみたいだった。後ろ手に手を組んで、俯いていた。
長いきれいな髪の毛が、ぱさりと顔にかかった。
その瞬間、たまらなくいい匂いがした。
『これが・・・ちゃんと遊べる最後かもしれないの。だから・・・』
ドキン、と心臓が跳ね上がる。
『大好きなの・・・キス・・・していい?』
その瞬間、ヒグラシたちが黙り込む。
そして、ざあっと音を立てて、風が吹いた。

