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淫夢売ります
第31章 白の花園:開く扉
私の身体は震え、立っていられないほどだった。
ダメ!・・・ダメ!・・・絶対!
それを言ったら・・・それ以上言ったら・・・!!!

そして、ついに我慢できなくなった。
「言わないで!!!」

瞬間、強烈な風が吹き荒れた。風は木の葉を散らし、散った木の葉が私の視界を奪っていく。私はたまらず、悲鳴を上げ、腕で目を覆う。

しばらくすると、風は吹き始めと同じように、急に止んだ。

「まだ・・・怖いの?」
ユミの声だった。私は恐る恐る目を開く。
周囲は、無明の闇に包まれていた。

上も下もわからない。右も左もない、ただの暗闇。
目の前、2m位先に、ユミが立っていた。

最初に会ったときと同じ服。ブラウンのワンピース、木製の大ぶりのチャームの付いたペンダント。

「もう、裕美は鍵を見つけたのに・・・。まだ、怖いの?逃げるの?」
ユミが私の目をじっと見つめてくる。
「何・・・を言っているの?」
ふっと、ユミが相好を崩した。
「大丈夫・・・怖いくない・・・私がついているから・・・だから・・・」
一歩、一歩、私に近づいてくる。右腕を伸ばしながら。
「お願い・・・もう、我慢しないで・・・」
その顔はなんとも悲しげで、なんとも切ない表情だった。
その様子が、あまりにも儚げで、あまりにもきれいで・・・私は身動きが取れなくなった。

そっと、ユミの手が私の左頬に触れる。親指が唇をなぞり、人差し指が目の下をなぞった。
そうされて初めて、私は自分が涙を流していることに気がついた。

「泣かないで・・・裕美・・・ごめんね、あの時、守ってあげられなくて」
そのまま右手を首の後ろに回し、私の顔を抱くようにする。私はそれに逆らわず、逆らえず、そのままユミの顔に自分の顔を近づけることになる。

二人の唇が、そっと触れ合う。

「その痛み・・・みんな、みんな・・・とかしてあげる」

暗闇の中、いつの間にかふたりとも一糸まとわぬ姿で互いに抱き合っていた。
ユミの体温が伝わってくる。最初は彼女から、次に私から、口づけをかわす。

ゆっくりと押し倒され、彼女の唇が優しく私の身体をなぞる。
頬を撫で、首筋に触れ、胸の頂きをそこに含む。温かい愛撫に、また一筋涙がこぼれてくる。

なんで、なんでこんなに悲しくて
なんでこんなに切ないの?
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