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淫夢売ります
第31章 白の花園:開く扉
☆☆☆
えっと・・・ここは・・・?

気がつくと、私は広いホールにいた。見上げると立派なシャンデリア。正面には左右に広がるように据え付けられている大きな階段が見える。

また、夢を見ているみたいだ。
ここは、ユミの屋敷の玄関ホールみたいだった。

「ユミ!」
私はユミの名を呼んでみた。正面に向かって、それから右を向いて、更に左の方に向かって。しかし、答えはなく、屋敷はしんと静まり返っていた。

また、外に出かけているのだろうか?

私は、ユミの日記を思い出した。ユミは、見てもいい、そう言っていた。
あの日記を見れば、私の記憶の秘密がもう少し解けるかもしれない・・・そう思ったのだ。
ゆっくりと階段を登る。ユミの部屋は、確かこっちだ。

左手に折れ、最初の扉。そっと扉を押すと、特に鍵もかかっておらず、あっさりと開いた。
「ユミ・・・」
一応声をかけてみる。どうやら時刻は昼で部屋の中は明るかった。ただ、人の気配はない。
「ユミ・・・いないの?」
部屋は沈黙している。右手のライティングビューローにも、正面の丸テーブルにも、そして、左手のベッドにも、ユミはいなかった。
悪いと思いつつ、昨日、日記が置いてあったテーブルに近づく。
「あれ?」
しかし、そこには日記はなく、一枚のメモ用紙が置かれていた。そこには、あの日記と同じ筆跡で、こうあった。

『裕美、お庭に来て』

え?ユミはあの庭にいるの?と思い、窓から庭を見下ろしてその姿を探してみる。しかし、そこにユミを見つけることはできなかった。もしかして、大きな樹があるので、その影に隠れているのかもしれない、そう思い、私は屋敷の裏手に急いだ。

息を切らせて裏庭の入口、白木の扉のところまでやってきた。庭と道を隔てるのは簡素な柵だったので、中を見ることはできるが、見渡してもユミを見つけることは出来なかった。

庭に来て・・・って。

もしかして、と思い、白木の扉の取っ手に手をかける。一瞬息を詰めて、それをクイッと押し下げると、ガチャリと音がする。ゆっくりと押すと、先日は鍵がかかって開かなかった扉が開いた。

鍵が開いている。

「ユミ!」
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