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ex-girlfriend
第5章 消えた彼女

最初に彼女の居場所を知っていそうなヒト…と思い付いたのは、
那須のあの別荘の女性だった。
幸い、ナビの履歴に住所は残っていたし、
記憶も新しいから簡単に到着出来た。
真鍮製のノッカーを叩くと、
訝しそうな顔でドアを開けてくれた女性は、
「あら?
いらっしゃい。
今日は一人で来たの?」と中に入れてくれた。
そして唐突に、
「あなた、薪を割れる?」と訊かれて、
「えっ?」と間抜けな声を出してしまう。
「ああ。
都会のコは、そんなこと、出来ないわよね。
大丈夫。
ゆっくりなら、私もやれるから」と目尻に皺を浮かべながら笑うので、
「いや、それくらいなら出来ますよ」と答えてしまう。
学生時代、山小屋でアルバイトをした時に、
やったことはあったから、
大したことはないと思った。
裏のテラスから外に出ると、
北側の屋根が掛かっている所に、
結構な量の薪があった。
「そっちのを割って、
その屋根の下に重ねて欲しいの。
やれるだけで良いわよ?」と言われたから、
上着を脱いで近くにあったテーブルに置いて、
袖を捲って、薪を割り始めた。
最初はゆっくり、
手応えを確かめるように。
そのうち、その行為に集中して、
無心になってしまう。
どれくらい時間が経ったんだろう。
女性が、
「ありがとう。
もう充分よ?
ほら。
そこに積んでくれる?
終わったらお茶しましょうね?」と笑った。
ハッとするとびっくりするほど薪を割り捲っていたようで、
僕はそれを丁寧に積み上げながら汗だくになっていることに気づいて、
可笑しくなってしまって一人で笑っていた。
那須のあの別荘の女性だった。
幸い、ナビの履歴に住所は残っていたし、
記憶も新しいから簡単に到着出来た。
真鍮製のノッカーを叩くと、
訝しそうな顔でドアを開けてくれた女性は、
「あら?
いらっしゃい。
今日は一人で来たの?」と中に入れてくれた。
そして唐突に、
「あなた、薪を割れる?」と訊かれて、
「えっ?」と間抜けな声を出してしまう。
「ああ。
都会のコは、そんなこと、出来ないわよね。
大丈夫。
ゆっくりなら、私もやれるから」と目尻に皺を浮かべながら笑うので、
「いや、それくらいなら出来ますよ」と答えてしまう。
学生時代、山小屋でアルバイトをした時に、
やったことはあったから、
大したことはないと思った。
裏のテラスから外に出ると、
北側の屋根が掛かっている所に、
結構な量の薪があった。
「そっちのを割って、
その屋根の下に重ねて欲しいの。
やれるだけで良いわよ?」と言われたから、
上着を脱いで近くにあったテーブルに置いて、
袖を捲って、薪を割り始めた。
最初はゆっくり、
手応えを確かめるように。
そのうち、その行為に集中して、
無心になってしまう。
どれくらい時間が経ったんだろう。
女性が、
「ありがとう。
もう充分よ?
ほら。
そこに積んでくれる?
終わったらお茶しましょうね?」と笑った。
ハッとするとびっくりするほど薪を割り捲っていたようで、
僕はそれを丁寧に積み上げながら汗だくになっていることに気づいて、
可笑しくなってしまって一人で笑っていた。

