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第1章 第一部【白桜記】　其の一・山桜

　隼は嬉しげに鳴くと、まるで透明な水の匂いを嗅ぐように鼻をひくつかせる。そのまま鼻面を水面に寄せると、さも美味そうに水を呑み始めた。小さな川のほとりに桜が一本植わっている。八重桜のように見えるが、花の色は殆ど純白と言って良く、ほんのりと色づいている程度である。かなりの樹齢を経ているらしく、そそり立つその姿には風格すら漂っていた。