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第1章 第一部【白桜記】　其の一・山桜

　その中(うち)、聡一郎はふと微かな水音が聞こえてくることに気付いた。ハッとして辺りを見回してみれば、前方に小さな川が流れていた。山頂に源を発した清らかなせせらぎが川となっているのだ。水はどこまでも澄んでいる。信頼は馬を引いてそのせせらぎまで歩いてゆくと、ここまで駆けどおしであった馬に水を与えてやっている。聡一郎も主に倣い、愛馬から降りると水際まで連れていった。