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100のベッドシーン
第14章 コーヒーの香りが溶ける夜に
毎朝、私はあの店に寄る。

出社前の15分――それだけの時間が、日々の疲れや焦燥を少しだけやわらげてくれる。

駅前の喧騒から少し離れた、古びた木扉のカフェ。

店の名前は「kakure」。

その名の通り、静かで、どこか内緒にしておきたくなるような空間だった。

店主の片桐さんは、45歳くらい。

背が高く、グレーの髪が少し混じった髭をきちんと整えている。

言葉は少なく、客にも深入りしない。

でも、コーヒーを淹れる手つきには深い愛情があって、それが私の心を溶かしていた。

「グァテマラで」

「……はい」

それだけのやり取りで、彼は黙って豆を挽き、丁寧に湯を落とす。

小さな湯気が立ちのぼる瞬間、私の呼吸は少しだけ整う。



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