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第23章 放し飼い

落ち込む武郎は仕事が手につかない。

ボーっとしていると営業パートナーの寺嶋が
「おいおい、どうした？
新人の五月病みたいになっているぞ」と
背中をおもいっきり平手で叩いてきた。

「よせやい、そんなんじゃないんだよ」

咲希と加菜恵を失った気持ちは
そんなに容易く回復しそうもなかった。

「関西支部営業部長が落ち込んでたら
大阪の業績回復は難しいかもな」

そう言って寺嶋は「いひひひ」と
嫉妬をこめて笑った。

「お前とは、あと一週間でコンビ解消だな」

この間抜け面ともおさらばかと思うと
ちょっぴりセンチメンタルになる。

「ああ、お前には
今まで美味しい思いをさせてもらったよ
今夜の飲み会は派手にやろうぜ」


そうだな…やけ酒でもくらって
憂さ晴らしでもするか…

「そうそう、そう、こなくっちゃ」

例のスナック、念のために予約を入れておくか

寺嶋はスマホを取り出すと
営業部の面々がいる前で
堂々と予約の電話をかけ始めた。