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シャイニーストッキング
第21章 もつれるストッキング5   美冴
 83 最悪でひどい夜…(7)

 この冷たいビールによって、わたしの心は一気に冷え…
 昂ぶりがスーッと醒めたのだ。
 
「え……」
 さすがに彼も、わたしの目の色の変化に気付き、察したのだろう…
 そんな動揺の声を漏らし、彼の目の色が弱々しく翳った。

「はぁぁ…」
 そしてわたしは続けて吐息を、いや、すっかり昂ぶりから醒めたため息を吐き…
 ゆっくりと彼に顔を向け、その目を見つめていく。

「ぁ……」
 すると彼は、小さな声を漏らし、目を泳がせてくる…
 それは、さっきまで、わたしを散々焦らし、狂わせ、エクスタシーという快感の海へと沈め、溺れさせた、勝ち誇ったオトコの目の色とは一転して弱々しい…
 その目はまるで、怯えの色。

 怯え…
 それは、昂ぶりが醒めたあとにだけ露わになる…
 現実への震え。

 つまり、今日の常務室での対峙の際に、露になってしまった松下秘書との下卑な関係…
 ゆかりさんへの裏切り…
 わたしの失望…
 それらの現実が、再び、心に甦った動揺…
 その裏切りの露見が、今さら怖くなったのだろう。
 
「………」
 わたしはそんな事を、彼の目から一瞬にして読みとり、無言で見つめていく。

「あ…い、いや、だ、大丈夫か?…」
 すると彼は、再びタバコを咥え、火を点けながら、必死に取り繕うように訊いてきた。

「え、大丈夫って?」
 わたしはすっかり醒め、澄ました、冷静な声音で問い返す。

「あ、ほ、ほら、また、例の…ほら、アレの、アレみたいに…な、なったからさ…」
 しどろもどろで、必死に応えてくる。

「アレって?」
「ほら、アレだよ、あの、心が…」

「あ、あぁ、自律神経の暴走ね…」
 解ってはいたのだが、わざとイジろうと惚けて返す…
「う、うん、そ、そう、その…アレだよ……」

「うん、ありがとう…おかげさまで…」
 
 わたしは嫌味を込めて…

「おかげさまで…
 最悪なくらいに治まったわ………」
 そう応える。

 そう、ワザと、また『最悪…』って…

 本当に…
『まったく…
 そんな狼狽えるくらいなら、もっと堂々としてれば良かったのに…』
 また、再び、あの『バー波道』での、心の慟哭の想いを浮かべながら…
 その意を込め、冷たく見つめていく。



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