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シャイニーストッキング
第15章 絡まるストッキング9     美冴とゆかり
 239 ギャップ差

「はい、それをザルに開けてぇ」
 わたしはゆかりさんに指示をする。

「あっ、う、うん」

「そうしたら、一気に流水で軽く揉む様に流す」

「は、はい」
 ゆかりさんは水道の蛇口を捻り、水を出して、茹で上がったお素麺を水に流していく。

「はい、ぬめりと粗熱が取れたらぁ、この氷水の中にいれてぇ…」

「う、うん」

「はい、完成、できましたぁ」

「え、あ、うん」
 ゆかりさんは目を輝かせて喜ぶ。

「ね、簡単でしょう」

「う、うん…」

 だが…
 簡単ではなかった。

 まず最初の鍋に水を入れた段階で、いきなりお素麺を入れようとしたのだ…

『あっ、沸騰してからじゃないとっ』

 知らないという事は本当に恐ろしい…
 と、わたしはつくづく思った。

「あ、ゆかりさん麺つゆ、濃縮五倍だから、お水を足して薄めないと…」

「え、そ、そうなの」
 本当に、全く何も、見事なくらいに料理に関しては無知であったのだ。

 でも、ここまでだとかえってかわいいわ…

 あの女として…

 知的で、聡明で、凜とした美しさを持っているこのゆかりさんが、こうまで料理に対しては無知であった…

 この激しいギャップの差が、ある意味、男性の心を騒つかせ、魅了するかもしれない…
 わたしは逆にそう思ってしまう。


「うわぁ、美味しぃわぁ…」
 ゆかりさんは満面に笑みを浮かべて喜んだ。

「そうですか、よかった、あとは薬味も刻んであるの売ってますから…」

「え、そうなの?」

「はい、だから、お素麺と麺つゆと、薬味を買って行けば、大原本部長に作れますよぉ」

 わたしがそう言うと…

「うん、やってみるわ」
 と、目をキラキラ輝かせて返事をしてきた。

 うわ、なんてかわいい顔をするのかしら…
 思わずわたしは心がキュンと高鳴り、母性本能がくすぐられてしまう。

 やっぱり、ゆかりさんは変わった…

 この笑顔…

 あの『鉄の女』と陰で呼ばれていた頃とは…

 天と地の差があるわ…

 これも全てはあの人の…

 大原本部長の愛情のおかげなのね…

 そう思いながらも、内心、秘かなビアンな昂ぶりも感じてきていた。




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