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シャイニーストッキング
第13章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一
 174 心の痛み

「わたしはさぁ…
 あの頃は、本当に、こうちゃんの事が大好きだったの…」
 そう突然囁いてきたノンの目が、淫靡な、そして妖艶な濡れた目に変わったのである。

 えっ、な、なんだ…

 ノンが…

 まさか…

 まさかノンが、欲情しきてるのか?…

 そしてザワザワがドキドキへと変わってきた。

「あ…」
 そしてお座敷の堀こたつ式のテーブルの下で、ノンの脚が、爪先が、私の脛に触れてきたのである。

 あ、う、ま、まさか…

 そうまさかであったのだ。

 まさか、こんな流れになるとは…

 まさか、私ではなくてノンが欲情するとは…

 そしてまさか…

 ノンからの誘いがあるなんて…

 まさかの、まさか…なのだ。

「わたしはさぁ…」
 ノンは淫靡で妖艶な輝きを放つ瞳を私に向け、そして爪先で脛に触れながら囁いてくる。

「あの頃のわたしはさぁ…」
 …本当に『絶望ののぞみ』になっちゃったの、だってぇ、わざわざこうちゃんに会いに行っても居ない、会えないし…
 そして最後の望みと希望を掛けてわざわざ東京の美容専門学校に入学をし、すぐ近くに住んだら既に引っ越しをしていた。
 
 そんな希望の入学が、一気に絶望の入学となり、完全に心が折れちゃったのよ…

「…………」
 返す言葉が無かった、いや、言葉が返せなかった。

「バカよねぇ…
 本当は分かっていたのよ、こうちゃんが大学入学して上京する時点で
『ああ…終わりなんだなぁ』
『これでお別れなんだ…』
 って内心は分かっていたの。
 それに現実的にもこうちゃんは
『後で電話するよ…』
 って云ってそれっきりだったし…」

 心がズキズキと痛んでくる…

 そうなのである、確か、大学入学直後の4月初めだった、私は前夜にノンと一晩過ごしてそして次の朝にそのひと言だけを云って大学に行き、そのまま帰らなかったのだ…
 あの日、大学入学直後に誘われた、正式な大学学連サーフィン部の新歓コンパでいきなり弾け、そこで知り合った先輩の女性のアパートにしばらく転がり込んだのである。

 そしてそのままプチ同棲生活を始めてしまったのだ…





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