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シャイニーストッキング
第13章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一
 152 自虐…

 この先きよっぺが律子に次いで第2のアキレス腱になるのか、ならなのいか…
 それはこの優柔不断な私自身次第という事なのだ。

「ふうぅ…」
 そんな事を逡巡しながら唇を離すと、彼女はため息の様な吐息を漏らしてきた。

 おそらく彼女もキスをしながら、私と似たような想いを巡らせていたのだろう…
 聡明な彼女の愁いの瞳を見てそう感じたのだ。

「先に出るね」
 私はそう言って浴室を出て再びリビングの椅子に座りタバコに火を点ける。

 ブー、ブー、ブー…
 すると携帯電話が着信した。

 時刻は午後11時である…

「あっ…」
 その着信は弟の健次からであった。
 今日も午後に母親のお見舞いに出掛けたまま、この時間まで実家に帰っていないせいからの電話であったのだ。

「あ、うん、もう少しで帰るよ…」
 そう言って電話を切る…
 すると後ろにきよっぺが立っていた。

「いや、昨夜も帰らなかったからさ…」
 そうなのだ、昨夜は同級生の宮本の店に出掛け、このきよっぺと運命的な再会をし、その流れのままに泊まってしまい、朝帰りをしたのであった。
 そして今夜も午後からお見舞いに出掛けたままであるのだ、さすがに帰るしかなかったのである。

「そうよね、さすがに今夜は帰らないとね」
「ああ、うん、そうなんだよ、さすがにさぁ、連夜はねぇ…」
 きよっぺは少し寂しそうな表情をしてきているのだが、大人であるのだ。
 

「じゃ、また…」
 そして身仕度を整える。

「うん、あ…」
 その目が
 明日も逢えるのか…
 と、問いかけてきた。

「うん、多分…おやすみ」
 私はそう呟き、スッとキスをする。

「うん、おやすみなさい…」
 きよっぺは何かを言いたそうであったが、そう呟いただけであった。
 
 多分明日も逢いに、抱きに、愛しに来たいし、おそらくは行くであろう…
 だが明日は10回忌の法事の前夜なのである、準備もあるし、兄弟で話さなくちゃならない事も多々あるのだ、だからそう毎晩フラフラと遅くまでは出掛ける訳にもいかないのである。

 だが、行けない…とも、ハッキリは言えなかったのだ。

 なぜなら優柔不断であるから…

 未練があるから…
 ハッキリ出来ないのである。


 そしてそんな自分自身に自虐してしまってもいた…

 本当にダメだな…と。

 



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