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シャイニーストッキング
第13章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一
 48 懐かしいキス

「うちに…、家においでよ…」
 きよっぺがそう囁いた。

 ああ…
 そして、私の心が一気に震え、揺れる。

 なぜならば、その言葉はあの頃の、禁断の、魅惑の逢瀬の二人の秘密の合言葉であったから…

『うちにくる?、おいでよ…』 
 それはあの27年前の、中学一年生の夏休みの秘密の逢瀬の合図…
 今日は家には誰も居ないから…の合言葉であったのだ。


「マンション…借りてるのよ」
 彼女はタクシーに乗るなり、そう囁く。

「出戻ってきたから実家に居づらくてさ…」
 そしてそう自嘲気味に呟いた。

 確かきよっぺは、本田家は、地元の名家であった。
 祖父が県会議員の議長等を務めており、地元でのゼネコン的な建設会社を経営していた、そして彼女の父親はその後を継いでいる。
 また、母親は当時、確か地元の市民病院の看護師長を務めていた記憶があった。
 
「そう…か」 
「うん……」
 そして私達は手を握り合い黙る。

 もう二人には言葉は要らなかったのだ…

 マンションに着くまでの約15分間、二人は目を閉じ、手を握り合っていた。 
 そして私自身がその間、あの約27年前の夏休みの体験が脳裏に蘇ってきていた様に、彼女もまたあの頃の、どこかの場面を振り返っていたのだと思われる。

 そしてタクシーは彼女のマンションの前に停車した。
 駅前の15階建ての新しいマンションであった。
 そして二人手を握りながらエレベーターに乗り、彼女が10階のボタンを押した瞬間であった…
「あ…」
  振り向き様に抱き付いてきてキスをしてきたのである。

 ああ…
 その突然の、27年振りの熱いキスに、一気に心が震え、昂ぶってくる。

 そして唇に懐かしいきよっぺの感触を感じ、あの時の、天体観測の夜、初めてのキスの感触と感動が蘇えり、心の奥からあの甘酸っぱい青春の想いが胸いっぱいに拡がってきた。

 ああ、きよっぺ…

 心の中で名前を呼び、唇を受け、舌先を受け入れ、流れ込んでくる彼女の甘い唾液を感じ、そしてきつく抱き締めていく。
 そして彼女の懐かしい、甘い香りが私の心を激しく刺激してきた。

「あ…ん……」
 彼女は喘ぎ、虚脱し、カラダを預けてくる。
 しかしエレベーターはあっという間に10階に到着した。







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