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シャイニーストッキング
第12章 絡まるストッキング6      和哉と美冴2
 41 見えない壁

 答えは自ずから分かるのだ…

 やはり今夜の再会は、終わりの始まりなのであろうか…

 手を伸ばせば届く距離、すぐ目の前に憧れの、五年間も憧憬の想いを渇望し、一時期は胸を掻きむしるほどに切望していた美冴さんがいる…

 だが、今はその手を伸ばせない、いや、伸ばす事が出来ない。
 そう、僕と美冴さんの間には見えない壁が立ち塞がっているのだ。

 いや、見えない壁を僕自らが、作っているといえるのである…

 どうするんだ和哉…

 どうする…


「ふうぅ、やっぱり少し調子に乗って飲み過ぎたみたい」
 美冴さんはトイレから戻るなりそう話してきたのだ。

「そ、そうなんですか…」
 なんとなくだが、ますます見えない壁が高くなったように感じてしまう。
 この熱い想いの機先を上手く逸らされてしまった感じがする。

「うん、お酒は好きなんだけどね…強くはないのよね」
「あ、僕もです」
「サークルとか入ってないからコンパなんていかないのかぁ…」

「あ、でも、入学して直ぐに、とある某サークルの新歓コンパに無理矢理連れていかれて…一度だけ、吐くほどに、メチャクチャに潰れるほど飲まされました」

 ああ、上手く僕の熱い想いは逸らされてしまったようだ…
 そして違った意味でこの話題を話したくなっていたのである。

「あらぁ、そうなんだぁ…」
 
 上手く逸らされてしまったようだ…

「吐くほどかぁ…」
「はい…酔い潰れてしまい、気付いた時は店の前でゲロまみれになって寝ていました」
 僕はその当時を一瞬思い出し、苦笑いをしながらそう告白をしたのだ。

「へぇ、そうなんだぁ…」
「はい、それからはしばらくお酒が怖くなって、飲みませんでしたよ」

「ふふ、やっぱり和哉はかわいいね」
 ドキッとしてしまう。
 そう言った笑顔が堪らなく、美しく、かわいいのだ。

 いいのか、和哉…
 再び、心の中に本当の僕自身が囁いてくる。

 だが…

 でも、どうすることも出来ない、いや、出来やしないのである。

 この先、どうやって今夜の流れを引っ張っていけばよいのか…
 さっぱり分からなかった。

 ただ、変な胸騒ぎと、心の騒めきと、昂ぶりがしているだけであったのだ…

 そして二人の間にそびえ立つ見えない壁が、ますます高く伸びていき、立ち塞がってきていたのである…






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