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Q 強制受精で生まれる私
第15章 6.0 度目
 社会的活動を許されない格好をしているにも関わらず、忙しない病院の日常の前では、私の白衣の下のことなんか誰も気に止めなかった。

 患者にはバレないとはいえ、私自身どうにかなってしまうのではないかとも思ったけど、不思議とそんなこともなく一日が過ぎていく。破廉恥な格好でも平常心でいられるのは、元来私がそういうのに耐性がある淫乱女だったからなのだろう。そう考えると、先生が私を襲ったのも無理はないのかなと思ってしまう。

「ちょっと。今日、先生何かあったの? いつも綺麗な笑顔なのに、今日は目が笑っていないわ。」

 この病院の常連であるお婆さんが、怪訝な面持ちで私を尋ねてくる。この人だけじゃない。今日診察に来てる患者さん全員が同じことを言っている。オンオフを切り替えられないなんて、いくら偉いお医者さんだからといって許されることじゃない。社会人失格だ。

「大変申し訳ありません。今朝からあんな感じでして…私からもやんわりと伝えておきますので。」

「そうね。そうしてあげてちょうだい。何か余程ストレスになるような出来事があったみたいね…反面、貴女はとても良いことがあったみたいね。何か、こう…」

 言いかける前に「気のせいですよ。」と言って釘を刺す。いくら傍目では分からないとはいえこの人は話が長いから、運悪く気付かれてしまうかもしれない。そうなる前に適当にあしらって、次の患者の対応を強引に進める。

 そっか。先生、他の人の体を見ながらも私のカラダのことばかり考えているんだ…これはとてつもないしっぺ返しがくるだろうな。それも想像を絶する程の罰が。

 私は反射的に大きく身震いして、乳房を引きちぎるかのように胸を鷲掴む。こうでもしないと沸き立つ脈動を抑えることができず、今すぐにでも心臓が破裂してしまいそうだった。

 午前の部が終わり、閉院まで後4時間弱。

 時計の針が進むのと同時進行で私の身体も火照り、湿り気を帯びていった。

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