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第24章 危険な誘惑（1）

部屋に夕食が運ばれてきて佑奈は手のひらを胸の前で合わせて目を輝かせた。


佑奈「わぁすごい」


地元の魚介をふんだんに使用した懐石料理だった。
勿論ここでも黒井は1番高価なコースをチョイスしていた。
普段は落ち着いている佑奈が、年相応にテンションが上がっている様子を見て黒井は満足した。


黒井はビールを注文し、佑奈はお茶で乾杯をする。


黒井「じゃいただきます」
佑奈「いただきます」



佑奈「・・・美味しい」


刺し身を口元に運ぶと佑奈はうっとりとした表情で感動を表した。


黒井も佑奈と同じ刺し身を取り、口に運ぶ。
確かに美味かった。鮮度がいいのが分かる。


黒井「美味しいね」


佑奈「美味しいです」


黒井「いっぱい食べて」


佑奈「はい　笑　いただきます。・・・これも美味しそう・・・あっ美味しい」


高級な食材が次々と佑奈の口に運ばれていく様子を特等席で見えて、黒井は「なんて贅沢なんだ」と思った。


湯上がりの浴衣姿の佑奈はとんでもなく美しかった。
温泉の効果なのか肌艶がより一層よく見えるのだ。


嬉しそうに料理を食べる佑奈を見て黒井はビールをコクリと飲み込んだ。


それにしても　と黒井はさっきの会話を心の中で反芻していた。


さっき佑奈は明らかに恥じらいを帯びた表情で黒井に今回の旅のお礼がしたいと言い出したのだ。


浴衣姿のせいかもしれないが普段の清楚な佑奈からは想像できないような妖艶な雰囲気があの瞬間は漂っていた。


黒井がどうしていいか返答に困っていると気まずい沈黙を破ったのは夕食の開始を告げる仲居のノックだった。
その瞬間佑奈はいつもの落ち着いた上品な彼女に戻り「はあーい」と爽やかな声で部屋の扉を開けに立ち上がったのだ。


黒井の中にはさっきの恥じらいを帯びた佑奈の表情がはっきりと残っていた。
さっきから悶々としたものが身体の奥底でふつふつと湧き上がるのを感じていた。