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彼の世界は官能で出来ている。
第10章 濡れる話のその後に…

「イチカ――――愛している…」
「やめて!それ以上…私を…」
イチカは元の熱い言葉に目を閉じた。
「イチカ…愛している、愛している…」
「やめて――――やめて…あぁ…あの時…振り向かなければよかった…あの時…貴方の瞳に捕まらなければよかった」
イチカの閉じた瞳は、真っ暗で何も映してはいなかったはずなのに、元と出会った時の運命的な場面を映画のように映し出す。
「愛している――――愛している…イチカ」
「あぁ…分かっていたんです。……私も…あの時…貴方に惹かれると…
でも、あの人と繋がり――――…戻れなくなってしまった…」
元はイチカを強く抱き締めると動脈の通る太い血管に言葉を流すかのように囁いた。
「君が戻れないなら――――…俺がそこへ行き…君を連れ去る」
動脈にそって流れた元の言葉はイチカの心臓に突き刺さった。
「あぁ…あぁ――――…元くん…」
「愛している…イチカ…君が誰のものでも」
元はイチカの首に真っ赤なバラの花びらを散らした。
そこだけが赤く熱く焼けつく。
「イチカ――――…君を抱くよ」
「元くん…私を――――…連れ去って」
二人はそのまま、イチカの部屋の玄関に崩れ唇を重ねた。
さっきとは違う、二人だけの時間を共に過ごすと決めた口づけだった。
「イチカ…イチカ――――」
元は濡れた唇をイチカのお世辞にも大きいとは言えない胸へと導く。

