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ひと夏の恋……そして……
第13章 私の心はどこに

『悪い、朝早くに!』
「ううん。起きてたから大丈夫だよ。それより何かあったの?」
陽が昇り始めた頃、夏樹から電話がかかってきた。
こんなに朝早くから電話があるなんて、何かあったんじゃないかと心配になる。
だけど、私の心配は杞憂に終わる。
『いや、ただ真緒の声が聞きたかったんだ』
「なに?それ」
心配しただけに、間の抜けた返事をしてしまう。
それでも声が聴きたいからと朝早くに電話してくれる夏樹を愛おしく思う。
『昨日さ、途中で電話しようと思ったんだけど酔いつぶれて寝ちゃったんだよな。で、さっき起きたら無性に真緒の声が聞きたくなって、こんな時間だけど電話かけたんだ。真和とも話したいんだけどさ。その前に真緒とゆっくり話したかったからさっ』
少し恥ずかしそうに言葉にする夏樹に、私の方がドキドキする。
『やっぱり、ずっと一緒にいたから寂しいのかな?俺』
いつにもなく弱気な夏樹にキュンとする。
「私も夏樹がいなくて寂しいよ」
『そっか、真緒も寂しいのか、同じだな』
「うん」
そう言いながら笑っても、心から笑えない。

