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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第2章 〝岬〟

その日は夜中にも関わらず、どこも人通りが多かった。多くは同世代か少し上の若者たちで、その多くは酔っぱらっているか、酔っぱらったみたいにハイテンションだった。
なにかのお祭りかと思っていたわたしは、人々の奇妙な仮装を見て、ようやく理解するのだった。
その日に限っては、わたしの姿がよく街に紛れた。誰も避けたりしない。それどころか「それ、なんの仮装なの?」となれなれしく何度も声をかけられ、その度に足早にその場を離れた。
一件目、二件目――五件目、六件目。足を運んだコンビニの店の内外には、どこも浮かれた後の人の姿があった。どこへ向かっても、食料を買うことができずにいた。
次の店でダメなら、今日はあきらめよう。わたしはそう思いながら、記憶にある中の最後のコンビニを目指していた。その足を早めながら、私はふと自らに問いかける。
今日は……?
もういいのではないか、と思った。今日がだめなら、明日も明後日もきっと。日に日に辛くなるのは十分に身に染みている。だとしたら、いずれは……。
そうして呆然自失のままに、わたしはその店を訪れていた。
「いらっしゃいませ」
「……!」
その時の彼の笑顔は、絵にかいたような爽やかな笑顔とは違った。女性を惹きつけるような、魅力に満ちていたわけでもない。
「……」
わたしは黙ったまま、彼の顔を眺めていた。すがるように、じっと。どこか控えめで、どこか繊細で、どこか臆病な笑顔だと――
わたしには、そう感じられた。

